後発薬に中国依存リスク

後発薬に中国依存リスク 日医工、原材料滞り供給停止 

後発医薬品メーカーが「中国リスク」に直面している。

後発薬は医療費削減に役立つと注目されているが、コスト削減を進める過程で中国メーカーからの原材料の調達が進んだため、相手先のトラブルで供給が止まるケースが出てきた。

大手後発医薬品メーカーも、調達先の多様化や内製化を進めるなど対応を急いでいる。

 

「在庫が切れたので別の抗生物質に切り替えたが、副作用が出ないか心配だった」。

ある大学病院の医師は今春に起きた混乱を振り返る。

後発薬大手の某メーカーが2月末に抗生物質セファゾリン」の供給停止を発表したことがきっかけだった。

 

藤沢薬品工業(現アステラス製薬)が1971年に発売したセファゾリンは、手術時の感染症予防などに幅広く使われる。

特許が切れた後は同じ有効成分を作って製造する後発薬が登場し、なかでも日医工は医療現場向けで6割のシェアを持っていた。

 

供給停止に追い込まれた原因は、原材料の調達先が中国メーカー1社に絞られていたためだ。

この中国メーカーの廃水処理が不備だったとして、当局が操業停止を指示。その結果、日医工が原材料の加工を委託するイタリアのメーカーからの出荷が止まった。

 

日医工はインドから代替品を調達できるよう現地メーカーとの交渉を始めており、近く契約する見込み。

年内には出荷が再開できる見通しだという。

 

後発薬メーカーはかつては原材料を自社で製造するか国内で調達していたが、コスト削減のために海外からの調達を増やしてきた経緯がある。

現在は比較的安価な中国メーカーから集中購買する構図が出来上がっており、原材料の過半を中国に依存するとされる。

 

日医工セファゾリンとは別の抗生物質「ダゾピペ」でも、中国企業の工場の事故で原材料の供給が滞る可能性が指摘されている。

リスクの顕在化を受けて依存を見直す機運も広がっている。

 

沢井製薬原材料の調達ルートの多様化を進めている。

現在は複数企業から購買している比率は約740種類の後発薬製品の5割ほどだが、70~80%に高めたいという。

特に高血圧治療薬など主力製品については2社だけでなく3社以上からの調達も検討する。

 

東和薬品は国内メーカーからの後発薬の原材料の調達比率を足元で55%まで高めており、自社グループでの内製化も進めている。

2010年に買収した大地化成(兵庫県)を通じ約70億円を投じて15年に工場を稼働させたほか、グループで20年度までに40種類以上の原材料の合成プロセスを開発する。

 

20年度までの3年間の研究開発費は260億円以上を計画する。

17年度までの3年間と同レベルだが、その前の3年間と比べると6割多い。過去最高水準の研究開発費を投じて、原材料の合成プロセスの整備を急ぐ。

ただ、対策を取っているのは体力のある大手メーカーに限られているのが実情だ。

国は医療費抑制のために後発薬の普及を後押しし、国内の後発薬市場は1兆円規模に成長したといわれる。

その一方で、薬価は年々引き下げられる。

ある後発薬メーカーの幹部は「ほとんどの製品が原価割れ。やめられるなら販売をやめたい」と漏らす。

 

学会も危機感を募らせている。

「国防にも関わる問題だ。薬価を引き上げ、設備投資を含めた国内生産の支援が必要だ」。

9月3日には日本化学療法学会や日本感染症学会など4つの学会が共同で記者会見を開き、抗生物質の供給体制について提言を公表した。

 

学会が国の政策である薬価や企業の支援に言及するのは極めて異例だ。日本化学療法学会の清田浩理事長(東京慈恵会医大教授)は「ここまで海外に依存している状況を把握できていなかった」と語る。

 

一方、提言を受け取った厚生労働省は「重要な問題と受け止めている」と回答したものの、具体的な対応には動いていない。薬価引き上げは患者の負担増などにつながる敏感な問題だからだ。中国依存リスクからの脱却は容易には進まなそうだ。

参考・引用一部改変 

日経新聞・朝刊 2019.9.23

 

<コメント>

この記事は後発品、いわゆるジェネリック医薬品が採算割れをしていることと、原材料を外国に依存する結果としての供給が不安定になることを取りあげています。

こういった医薬品の原材料が中国やインドに頼っていること自体を知らない患者さんが大半ではないでしょうか。

それは、わざわざ後発品メーカーは言う訳がないからでもあります。

しかし、問題はもう少し深刻です。

それは、品質の問題です。

TVのCMでは、品質は(先発品と)同等であるかのようなことを言っていますが、決してそうではありません。

一昨年から昨年にかけて、降圧剤に発がん物質が混入さしていることが報道されています。いずれも中国とインドの原料に問題があったのです。

 

参考

厚労省 ARB発がん性物質混入問題で迅速な対応を

https://www.mixonline.jp/tabid55.html?artid=65603

中国の製造所「Zhejiang Huahai Pharmaceutical Co.Ltd(以下、Huahai)でバルサルタンの原薬から発がん性物質が検出され、世界的な問題となった。国内では、7月にあすか製薬は、バルサルタン錠「AA」の全ロットを対象に自主回収している。

一方で、この問題はバルサルタンや、問題の製造所の問題にとどまらず、他の製造所や他のARBにも波及している。

インドの「Aurobindo Pharm Ltd.」で製造されたイルベサルタンでもNDEAが検出されたことや、Huahai以外の製造所でも検出されたことが公表されている。