猛暑の熱中症 どう備える 「感染疑い」、搬送遅れるおそれ
新型コロナウイルスへの警戒が続く中、今年の夏は例年以上に熱中症に注意が必要だ。
外出自粛が続いて体が暑さに慣れていないうえ、熱中症による高熱やだるさは新型コロナの症状と区別しづらい。
発症して救急搬送されても「感染疑い」とみなされ、受け入れ病院がすぐ見つからない事態も懸念される。
■ 区別しづらい症状
今年の夏は全国的に暑い・・・。
気象庁は6月下旬、そんな見通しを発表した。
特に8月は晴れの日が多く、厳しい暑さが続く可能性があるのだという。
ただ、夏の盛りを前に、熱中症の救急搬送はすでに週1千件を超える。
総務省消防庁の速報では、6月1日からの3週間で計4241件。
昨年の同じ時期の1.5倍で、うち8人が亡くなり、82人は重症だ。
熱中症による高体温は脳へのダメージが大きく、重症になると助かっても元の生活に戻れないことも多い。
重症化すると社会復帰が難しい病気だからこそ、早めの処置が重要だ。
しかし、今年は熱中症の搬送が結果的に遅れる可能性は十分ある。
新型コロナの主な症状は高体温とせきなどの呼吸器症状。高体温は熱中症の症状そのもので、肺の病気を持つ人が熱中症になる場合もある。
救急搬送も含め医療側は「熱中症で救急車の要請があれば、現状では全て新型コロナを疑って対処しないといけない」という。
■ 受け入れ難航8割増 感染拡大期
感染が疑われる救急患者は院内感染につながる恐れがあり、受け入れに消極的な病院は少なくない。
実際に3月下旬からの新型コロナ感染拡大期には、救急患者の搬送が困難だったケースが急増した。
4月に「特定警戒都道府県」に指定された道府県庁所在地の12消防本部と東京消防庁に朝日新聞が取材したところ、「受け入れを3カ所以上の病院に断られ、かつ受け入れ先が決まるまで30分以上かかった」ケースは、3月末から約2カ月で1万1754件。
前年の同じ時期より8割増えた。
東京では、こうしたケースが3月30日から6週連続で前年より2~3倍ほど多い状況が続き、5月25日からの1週間も45%増だった。
厚生労働省は5月、感染が疑われる救急患者をまず受け入れる病院を検討するよう都道府県などに求め、都道府県側も対策を進める。
ただ、熱中症の発生ピーク時に再び感染が広がれば、対応能力を超える恐れがある。
■ 体を暑さに慣らして 朝夕に運動で汗
こうした状況では、熱中症の予防が何よりも肝心だ。
気温が上がると汗の量が増えるなど、体が暑さに備える「暑熱順化」が起きる。
この準備はすぐに整うわけではない。
例年、梅雨の合間の晴れた日に熱中症が増えるのも、暑熱順化が不十分なことが一因だ。
その対策としては、本格的な夏が来る前に体を暑さにならすことが大事だ。
今年は長引いた外出自粛で準備ができていない人もいる。
気温が上がり過ぎないうちから、適度な運動で準備を始める必要がある。
ポイントは、運動で汗をかくなど、体にもともとある体温調節のしくみを実際に働かせ、「予行演習」をさせておくことだ。
昼間はエアコンの利いた部屋で過ごし、朝や夕方などの暑すぎない時間帯に適度に運動すれば効果はある。
運動の際にマスクを着けると熱中症になりやすくなるのでは、という心配もある。
マスクを着けているからといって運動を控え、その結果、体が暑さに備えられない方がむしろ熱中症のリスクを高める。
運動中は無理をせず、周囲との距離がとれていればマスクは外してかまわない。
■ 独居の高齢者、連絡は密に
熱中症は高齢者が住居で発症することが多い。
日本救急医学会など4学会が6月1日に発表した熱中症予防の提言では、人とのつながりが減ることで「発症リスクを上げてしまうことも危惧される」と指摘し、
一人暮らしの高齢者らへの頻繁な連絡を勧める。
独居だと、軽度の失神で倒れて誰にも気づかれずに重症化する可能性もある
直接会いに行くのが難しいときは、電話などで、いつも以上にこまめに連絡をとる必要があるかもしれない。
参考・引用一部改変
朝日新聞・朝刊 2020.7.1
<関連サイト>
熱中症対策のポイント
https://aobazuku.wordpress.com/2020/07/06/熱中症対策のポイント/
暑い日にマスク、息苦しく熱中症が心配 水分・塩分をとること、より意識して
Q 最高気温が30度を上回る日もあり、蒸し暑い日が続きます。
新型コロナの感染を防ぐためにマスクを着けると、息苦しいです。
熱中症も心配です。
A 夏用のマスクとして、通気性のよいものや、保冷剤を入れて、冷たく感じさせるものなどが販売されています。
感染防止の観点からは、これらのマスクを過大評価も、過小評価もしてはいけません。
まず、通気性のよいマスクの場合、隙間を多くしているため、ウイルスも入りやすくなっています。
息苦しさを減らして暑くても着けやすくすることと、ウイルスの侵入を防ぐことは、相反するトレードオフの関係にあるということです。
ただ布マスクと同様、一部の大きい飛沫を抑える効果は十分あるでしょう。
暑い中、マスクを着けていると蒸れて、マスクを外して汗をぬぐいたくなります。
もし外す場合は、感染のリスクが低い場所を選ばなくてはいけません。
また、呼吸は体温調節機能にも関係しています。
マスクを着けていることで、熱がマスク内にこもったり、息苦しいために体に負担がかかったりする恐れがあるという認識も必要です。
ただ気をつけたいのは、マスクを着けていてもいなくても、熱中症は起こり得るということです。
防ぐには、マスクを外すことだけでなく、水分や塩分をこまめにとることをより意識する必要があります。
外出時にマスクを外したくないがために、水分をとるのが遅れるようなことは、避けなければいけま
せん。
参考・引用一部改変
朝日新聞・朝刊 2020.7.1