新型コロナ、抗体医薬の開発状況

「抗体医薬」が、がんや感染症などの治療で脚光を浴びています。

新型コロナのウイルスがヒト細胞に侵入するのを妨げ、感染や重症化を防ぐ効果が期待されています。

現在、新型コロナワクチンの開発についてスピード競争が行われていますが、個人的にはあまり期待していません。

副作用の心配もさることながら、従来のインフルエンザワクチンでさえ効果には疑問符がつくからです。

「抗体医薬」が、もし重症化を防ぐことが出来るということなら、新型コロナに罹患してから「抗体医薬」を使用するということの方が現実的かも知れません。

この治療の効果次第では、高齢者などのハイリスクの人たちには福音になるかも知れません。

まずは副作用が、もしあったとしてもごく軽くかつ少ないことが期待されます。

そもそも抗体医薬は人間の免疫細胞が外敵を攻撃する抗体を人工的につくるもので、効果が高く副作用が少ない薬ということで早期の登場が望まれています。

 

新型コロナ、抗体医薬の治験開始 予防薬として開発も

米製薬大手イーライリリーは、カナダのアブセレラ・バイオロジクスと共同で新型コロナウイルス感染症治療薬として開発している抗体医薬の臨床試験(治験)を開始したと1日に発表した。

初めて人に投与する第1相臨床試験で、米ニューヨーク大学グロスマン医学部病院や米ロサンゼルスのシーダーズ・サイナイ病院などで行われている。

入院患者を対象とし、開発中の抗体医薬またはプラセボ(偽薬)を投与して安全性などを評価する。

 

また、両社は予防効果の検討も計画している。

対象としては、ワクチンが適応にならない、感染リスクまたは重症化のリスクが高い人々を想定している。

 

この抗体医薬は、新型コロナウイルスの表面にある突起状のスパイクたんぱく質を認識する「IgG1モノクローナル抗体」で、ウイルスの人の細胞への結合と侵入を阻害することにより、ウイルス本来の作用を失わせる中和活性を発揮する。

アブセレラと米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のワクチン研究センターが、米国において新型コロナウイルス感染症が報告され始めた頃に発症し、その後回復した1人の患者の血液中から見つかったウイルス感染を防ぐ中和抗体を基に作製している。

 

6月末には、最初に投与された患者グループのデータを分析し、好ましい結果であれば対象患者を増やし、有効性評価を目的とする臨床試験を開始する計画だ。

この段階では、自宅隔離を指示された軽症患者も対象に含めることになっている。

 

患者の治療結果に改善をもたらせることが確認されれば、2020年末までに量産を目指すという。

 

イーライリリーは他にも中和抗体を開発しており、それらについても今後数カ月のうちに臨床試験を開始したいと考えている。

有用な抗体医薬が複数得られれば、個々の抗体による単剤治療に加えて、複数の抗体を併用する治療についても検討する予定だという。

 

参考・引用一部改変

日経新聞 2020.6.9

 

 

米イーライ・リリー、コロナ抗体薬の後期治験 高齢者施設で

米製薬大手イーライ・リリーは3日、カナダのアブセレラ・バイオロジクスと共同開発する新型コロナウイルス抗体薬が後期段階の治験に入ると発表した。

 

新型コロナ患者が発生した高齢者施設で入居者やスタッフから最大2400人の参加者を募り、この薬の投与後4~8週間に感染や重症化を予防する効果が見られたか検証する。

治験は米国立衛生研究所(NIH)と協力して進める。

 

リリーのモノクローナル抗体薬「LY-CoV555」は、新型コロナの回復患者から抽出した抗体がモデルとなっている。

新型コロナのウイルスがヒト細胞に侵入するのを妨げ、感染や重症化を防ぐ効果が期待される。

 

米国では新型コロナによる死者の4割を高齢者向け施設の入居者などが占め、対策が急務となっている。

リリーは治験用にキャンピングカーを改造した医療用車両を用意。

新型コロナのクラスター(感染者集団)発生リスクのある施設が見つかった場合、迅速に移動し、施設内に必要な設備がなくても現場で治験を進められる体制を整えている。

 

リリーは「LY-CoV555」で新型コロナ感染患者を対象の中期段階の治験も並行して進めており、10~12月期に完了を見込む。

これまでのところ、重篤な副作用は報告されていない。

既に量産に向けた準備を進めており、治療への効果が確認できた場合、20年末までに10万回投与分の生産が可能としている。

 

新型コロナの感染拡大に収束の兆しが見えない中、経済正常化にはワクチンなど予防薬の実用化が鍵を握ると見られている。

予防ワクチンは米ファイザーや英アストラゼネカなどの開発する候補が治験の最終段階に入り、開発が急ピッチで進む。

 

ワクチンが体内の免疫の仕組みを利用し抗体の生成を促すのに対し、抗体薬はウイルス感染から回復した患者が獲得した抗体のコピーを作り、直接投与する仕組みをとる。

ワクチンは量産や輸送のハードルが高いうえ、健康上の理由で接種できないケースも想定される。

抗体薬を実用化できれば予防の選択肢を広げることができる。

 

参考・引用一部改変

日経新聞 2020.8.4

 

 

 

アストラゼネカ 新型コロナの抗体医薬、治験開始

英製薬大手アストラゼネカは25日、新型コロナウイルスの予防・治療薬である抗体医薬の初期臨床試験(治験)を始めたと発表した。

特定の細胞に作用する抗体によってウイルスを抑える効果が期待され、安全性や有用性を調べる。

 

英国の18~55歳の健康な被験者を対象に、開発中の候補薬「AZD7442」の投与を開始した。

最大48人を対象に検証する。

初期治験であるフェーズ1(第1相)で有用性が認められれば、より大規模なフェーズ2以降に移る。

 

この薬は特定の抗原に反応する「モノクローナル抗体」を2種類組み合わせたものだ。

がん治療薬にも応用されている抗体の仕組みで新型コロナウイルスを攻撃する。

感染の予防に加え、既に感染した患者を治療したり症状の進行を抑えたりする可能性があるという。

 

AZD7442は米バンダービルト大学が発見し、6月にアストラゼネカがライセンス供与を受けた。治験には米政府傘下の国防高等研究計画局(DARPA)と、生物医学先端研究開発局(BARDA)が資金を拠出している。

 

アストラゼネカはこれとは別に、英オックスフォード大と共同で新型コロナワクチンの開発も進めている。

 

抗体医薬は人間の免疫細胞が外敵を攻撃する抗体を人工的につくる。

効果が高く副作用が少ない薬として期待されている。

 

参考・引用一部改変

日経新聞 2020.8.26

 

 

 

英GSK、コロナ治療薬で初期治験 米社と開発の抗体医薬

英製薬大手グラクソ・スミスクライン(GSK)は31日、新型コロナウイルスの予防・治療薬である抗体医薬の初期臨床試験(治験)を始めたと発表した。

効果が確認されれば、高齢者や持病を持つ人などリスクが高い患者の感染や重症化を防げる可能性がある。

 

今回治験を始めたのは、米ウィル・バイオテクノロジーと共同開発している抗体医薬。

世界の約1300人を対象に、ハイリスク患者の感染を防げるか、重症患者の症状を軽減できるかなどを確かめる。

初期の治験結果は今年中に発表し、来年1~3月中にも完全な結果を出す予定だ。

 

ワクチンが免疫の仕組みを利用して抗体の生成を促すのに対し、抗体医薬は抗体を人工的につくって投与する仕組みだ。

GSKは「有効なワクチンがない場合には特に重要だ」としている。英製薬大手のアストラゼネカや米製薬大手イーライ・リリーなども抗体医薬の治験を始めている。

 

参考・引用一部改変

日経新聞 2020.9.1

 

<関連サイト>

抗体医薬品  最先端の治療

https://www.kyowakirin.co.jp/antibody/about_antibody/index.html

抗体医薬品とは、生体がもつ免疫システムの主役である抗体を主成分とした医薬品です。

一つの抗体が一つの標的(抗原)だけを認識する特異性を利用します。

 

抗体医薬品とは?

https://www.chugai-pharm.co.jp/ptn/bio/antibody/antibodyp09.html

抗体医薬品は、がん細胞などの細胞表面の目印となる抗原をピンポイントでねらい撃ちするため、高い治療効果と副作用の軽減が期待できます。

病気の原因の組織で過剰に作られるタンパク質を抗原として認識して結合する抗体医薬品もあります。

 

抗体医薬品の特徴とは?

https://www.chugai-pharm.co.jp/ptn/bio/antibody/antibodyp10.html