熱・のどの痛み・・・扁桃炎、風邪と勘違いに注意を
発熱やのどの痛みがあり、風邪だと思い市販の風邪薬を飲んだが、治りが悪い。
こんな場合、のどの入り口付近の扁桃が炎症を起こした「扁桃炎」かもしれない。
慢性化し何度も繰り返す人もいる。
悪化するとうみが広がり手術が必要になったり、腎炎などの引き金になったりすることもある。
軽く見ないで早めの治療が大切だ。
⬛︎ 炎症でうみ広がる
50歳の男性Aさんは微熱、のどや首の痛みに悩まされ、近くの医院などを受診した。
しかし、手のしびれやうまく歩けないなどの症状も出て、順天堂大学医学部付属順天堂医院を受診。
検査するとうみが食道の周辺や胸部などにたまり、脊椎も炎症を起こして化膿していた。
緊急手術でうみを取り除いたが、手足にまひが残り、リハビリ治療を続けた。
こういった場合は扁桃炎によるうみが原因のことが多い。
まず、扁桃の周囲にまで、うみが広がる扁桃周囲膿瘍を起こし、さらに「うみが重力によって下へ落ち、扁桃床と呼ばれる部分を突き破って食道周辺や胸部に広がることもある。
これは扁桃炎で考えられる最悪のシナリオだ。
Aさんとは別だが、まったく離れた腎臓にまで細菌の影響が及び腎炎を起こすケースもある。
扁桃は体の免疫力をつくり、鼻や口から細菌が気管や肺に侵入するのを防ぐリンパ組織が集まっている。
普段、扁桃と呼ぶのは、このうち口の奥の左右両側にある口蓋扁桃という部分だ。
細かな溝がたくさんあるために細菌の巣になりやすく、疲れやストレスなどで抵抗力が弱ると感染を広げ、炎症を引き起こしてしまう。
うみがたまり口内炎のような白いぶつぶつがたくさんできる。
悪化すれば痛みのために、食べたり飲んだりしづらくなる。
乳児がかかれば乳を飲めなくなり、栄養をとれずに体力が衰える危険もある。
細菌の種類は黄色ブドウ球菌、溶連菌など様々。
軽いうちなら抗生物質の投与で、1週間もあれば治る例が多い。
内服薬で効果がなければ点滴をする。
ウイルスが原因の扁桃炎は、抗生物質が効かないので、消炎剤などに頼る。
扁桃炎になり、時折のどの痛みなどを覚えながらも扁桃周囲膿瘍などになるまで普段とあまり変わらずに過ごす人もいる。
市販の風邪薬で痛みを抑えているうちに状況が悪化していたという例も結構ある。
こういったケースは体調が悪くても薬を飲みながら、がんばって仕事を続けてしまうような人に多い。
年に何度も扁桃炎を繰り返すなど慢性化してしまい、口蓋扁桃の摘出手術を望む患者もいる。
ところで風邪と扁桃炎と簡単に見分けられるのだろうか。
ともにのどが痛み、熱も出るが、扁桃炎は風邪と違い、せきはあまり出ない。ただ症状だけでは判断しづらい場合もある。
内科を受診してもなかなか治らないなどの場合は、耳鼻咽喉科でのどを診てもらうとよい。
口の中を見せてもらえば扁桃炎かすぐわかる。
■ 大人の受診増える
のど風邪の症状を訴えて同病院を受診する患者の1~2割は扁桃炎で、大部分は細菌が原因だ。
子供は比較的軽いうちに来るが、大人はリンパ節が腫れるくらい悪化してから訪れるケースが目立つ。
扁桃は幼少期が最も大きく働きも活発で、年齢とともに縮小していく。
このため扁桃炎は子供に多いと考えがちだが、近年の受診者は大人が増えている。
職場環境が厳しく、仕事を休みにくくて無理をしてしまうからではないか、と推測される。
扁桃炎予防には、日ごろからうがいを励行することが有効だ。
刺激が強いうがい薬は避け、水で十分だ。
生理食塩水の点鼻の実践で、鼻やのどの粘膜上皮の機能を高められると期待する専門医もいる。
冬は室内が空調で乾燥しすぎないよう注意したり、口呼吸よりも鼻呼吸を心がけたりするなどの工夫も、粘膜を守るのに役立つ。
扁桃炎を防ぎ、発症しても悪化させないために重要だと専門家が一致して挙げるのが、規則正しい生活、十分な睡眠、バランスのとれた食事、体力、心の健康などだ。
現代社会では難しいものばかりだが、暑さで疲れやすい夏だけでなく、異動や転勤で生活が変わる時期などに生活リズムが狂ったり心の安定を欠いたりしないよう気をつけたい。
のどの変調を感じたら「単なる風邪」と勝手に判断せず、医師に相談するとよい。
参考・引用一部改変
日経新聞・夕刊 2014.8.1
<関連サイト>
扁桃炎の悪化のシナリオ
https://wordpress.com/block-editor/post/aobazuku.wordpress.com/1400