アルツハイマー病、初の進行抑制型「アデュカヌマブ」

アルツハイマー病、新薬に期待と課題 初の進行抑制型「アデュカヌマブ」、米で優先審査

認知症のなかでも患者が多いアルツハイマー病の新しい治療薬への期待が高まっている。製薬会社が承認申請したものを米当局が「優先審査」していて、来年3月までに結論が出る。認められれば、アルツハイマー病の進行を長期間抑える世界初の薬として実用化される。だが、効果がはっきりしないとの指摘があり、治療費が高額になる懸念もあるなど課題は多い。

 

効果未知数・薬価高騰の懸念

治療薬の候補は、米製薬大手バイオジェンと日本のエーザイが共同開発する「アデュカヌマブ」。

今年7月にバイオジェンが米食品医薬品局(FDA)に承認を申請した。

米当局は今月、通常より短期間で結論を出す優先審査の対象にすることを決めた。

審査終了の目標日は来年3月7日。

会社側は今後、欧州や日本でも承認申請を検討している。

 

アルツハイマー病は、脳内に「アミロイドβ」というたんぱく質がたまることで神経細胞が徐々に働きを失い、認知機能が低下するとみられている。

認知症の患者は世界に5千万人、日本に600万人いて、その7割ほどがアルツハイマー型と推計されている。

アデュカヌマブは、アミロイドβを除去できる初めての薬になるのではないかと期待されている。

 

既存の治療薬との違いは、認知症の前段階である軽度認知障害という「早

期」に投与を始められることと、長期間にわたり症状の進行を抑えるとされることだ。

既存の治療薬は症状を一時的に軽くするもので、時間とともに認知機能

は低下していた。

 

大手製薬会社は認知症の新薬の開発に挑むが難航している。

原因が詳しくわかっておらず、動物を使った病気の再現も難しいためだ。

日本でこれまでに承認されたのは4種だけ。

認知症領域でFDAが承認した新薬は2003年以降一つもない。

 

アデュカヌマブは優先審査されているが、検証を受けて最終的に承認される可能性は「五分五分」(外資系証券のアナリスト)ともされる。

新薬の開発には長い期間と多額の費用がかかる。

承認されなければ販売することはできず、会社側には大きな負担となる。

 

それでも各社が開発を続けるのは巨額の利益が見込めるためだ。

アルツハイマー病は根本的な治療法がなく、新薬ができれば多数の患者が投与を希望するとみられる。

世界での年間売上高が1千億円を超す大型新薬「ブロックバスター」になる可能性もある。

 

一方で、課題もある。

アデュカヌマブは昨年3月、有効性の証明は難しいと判断され、臨床試験(治験)が中止された。

バイオジェンはその後、全患者のデータを見直し、投与量が多ければ有効性があるとして、承認申請にこぎつけた。

 

しかし、どこまで患者が効果を実感できるのかわからないと指摘する経済アナリストもいる。

投与対象となる早期段階の患者を見つけるのは簡単ではなく、「期待しすぎるのは禁物だ」と言う。

 

製造コストが一般的な薬よりもかかるとされ、薬価が高くなる可能性もある。

多数に投与するなら、公的医療保険の財政悪化につながりかねない。

効果と治療費とのバランスをめぐり社会的な議論を呼びそうだ。

 

アルツハイマー病新薬への期待と課題

■ 期待

・高齢化で患者は急増

日本における認知症の人は2025年に約700万人、65歳以上の5人に1人にのぼるとの推計がある。

最も多いアルツハイマー型の治療薬への期待は高い

・経済効果が大きい

アルツハイマー病の発症を5年遅らせる新薬などあれば、日本では25年度の医療・介護費が単年で約1.9兆円減る試算がある。

・既存薬の効果は限定的

神経の働きを肋けるものなど治療薬はあるが効果は限定的。

「アデュカヌマブ」は軽度認知障害の段階から投与することで、症状の進行を遅らせると期待さ

れる。

 

■ 課題

・開発が難しい

認知症は動物を使った病気の再現が難し<、治療薬の開発が困難。

17年までの20年間で146の薬剤候補が開発中止となった。

・治療費が高額に

新薬開発には数百億円以上ともされる巨費がかかる。

製造コストもあり治療にかかる費用は高<なりがちだ。

・日本での承認に時間

仮に米国で承認を受けても、日本での販売には改めて日本当局の示認が必要となる

 

参考・引用一部引用

朝日新聞・朝刊 2020.9.23

 

<参考>

新しいアルツハイマー病治療薬に期待される効果の概念図

https://aobazuku.wordpress.com/2020/09/23/新しいアルツハイマー病治療薬に期待される効果/