便、秘められた可能性 「茶色いダイヤ」、アスリート700人の腸内細菌研究
便に含まれる腸内細菌は、体調を整えるサプリ開発や難病の治療など、さまざまな可能性を秘めている。人呼んで「茶色いダイヤ」。
企業や研究者は、どこまでこのダイヤを光らせることができるのか。
人の腸管には約1千種類、100兆個もの腸内細菌が生息しているとされ、便には多くの場内細菌が含まれる。
細菌が腸内で作る群れは「腸内細菌叢(腸内フローラ)」と呼ばれ、その乱れは、腸の病気だけでなく、アレルギーや精神疾患にも関係していると言わ
れている。
アスリートと一般人の便を比較したデータがある。
一般人に比べてアスリートの便の方が菌の種類が豊富で腸内フローラの多様性があり、腸の動きを活発化し免疫を整えるという酪酸菌も約2倍あることがわかった。
マウスや培養した細胞を用いて、アスリートに特徴的に見られる場内細菌が
代謝に与える影響を調べた研究もある。
その研究によると、人の腸内細菌のパターンは食事により大きく3種類に分けられるが、アスリートは一般の人に比べ、このパターンがはっきりしているという。
健康な人から移植 データ収集も
昨年出たレポートによると、体にいい微生物を合む製品(プロバイオティクス)の市場規模の予測は国内で9700億円、世界では7兆円とされる。
医療の現場では、健康な人の便から取った腸内フローラを移植する「便移植」が始まっている。
潰瘍性大腸炎の治療に使えないかという研究も進む。
原因がわからない慢性の難病で、さまざまな合併症をともなうこともある。患者は国内16万人以上とされる。
抗生剤を使う治療に、便移植を組み合わせることで治療効果を高めようとしている。
人の場内細菌をデータベース化し、病気の予防などに役立てようとする研究も進む。
20歳以上の健康な人に便を提供してもらう取り組みもある。
5千人規模のデータを集める予定だ。
腸内細菌は、新型コロナとも関連がありそうだ。
中国の研究チームは6月、入院していた軽症から重症の患者の便を調べたところ、重症者では抗炎症作用があるとされる菌が特に少ない傾向にあった
と発表した。
チームは「腸内フローラを変えることができれば、疾患の重症度を下げることができるかもしれない」と結論づけた。
企業と連携し、サプリヘの応用を目指している。
腸内細菌の医療への応用は将来、広がる可能性があるとみられる。
一方で腸内細菌と、免疫異常により起こる自己免疫疾患との因果関係はまだはっきりしていない。
治療として普及するには、場内細菌のどの機能がどう病気にかかわっている
かを明確にすることが求められる。
参考・引用一部改変
朝日新聞・夕刊 2020.8.20