COVID-19 多くの感染者、軽症・無症状の理由は

多くの感染者、軽症・無症状の理由は 風邪でできた免疫影響か

新型コロナウイルスの「第2波」を迎えた8月の致死率は0.9%と、5月に比べ8分の1に下がった。

検査の拡充で軽症や無症状の人が多く見つかり、分母となる感染音数が増えたことが大きな要因だ。

なぜ多くの人は、感染しても軽症や無症状ですむのか。

 

新型コロナの一番やっかいな特徴は、誰が感染を広げているのかが見えにくい点だ。

厚生労働省の診療の手引には、新型コロナに感染して発症した人の80%は軽症のまま治とある。

 

だがこのデータは、中国で2月11日までに診断された約4万人のデータに基づく。

当初は軽症や無症状の感染着がかなり見過ごされており、軽症のまま治る人の割合はもっと高い可能性がある。

中国の研究グループは7月、3月8日までに武漢市で感染した人の87%は、検査で感染が確認されていなかったと推計した。

 

感染症には無症状から重篤まで幅があるのが普通だ。

どちらになりやすいかは、ウイルスの特性や感染した人の状態など、様々な要素が関わる。

 

重要なのが、過去に感染したウイルスを覚え、再び感染したら速やかに攻撃を始める「免疫」の働きだ。

主役となるT細胞というリーンパ球は、ウイルスに感染した細胞を殺し、ウイルスが増えるのを抑える抗体を作るよう指示する。

ただ、最初の感染時は、T細胞や抗体が攻撃力を高めるまでに時間がかかる。

新型コロナは昨年末から流行し始め、人類は免疫を持たないとみられてきた。

それが最近の研究で、感染していなくても、新型コロナに反応するT細胞を持っている人が一定の割合でいることがわかってきた。

 

米国の研究グループが2015~18年に採った20~60代の人の血液を調べたところ、約半数に新型コロナに反応するT細胞が含まれていた。

同様の報告は英国やオランダ、ドイツなどからもあがる。

過去に採った血液から、新型コロナに反応する抗体が一部で見つかったという報告もある。

 

なぜなのか。

考えられるのが、過去にできた免疫が似ているウイルスにも反応する「交差反応」という現象だ。

コロナウイルスには、普通のかぜの原因になるものも4種類ある。

過去にかぜをひいたときにできたT細胞や抗体が、交差反応を示した可能性がある。

このことが、新型コロナに感染しても、非常に軽い症症状ですむことに影響しているかもしれない。

 

09年に流行した新型インザでは高齢の患者が比較的少なく、交差反応が一因とされている。

1918~20年に「スペイン風邪」を引き起こしたウイルスは、新型インフルと一部が酷似し、当時の流行などで得られた抗体が効いた可能性が指摘されている。

 

この交差反応は有力な仮説の一つだ。

ただ、新型インフルのときと比べ、新型コロナは風邪コロナと似た部分が少ない。

新型コロナに交差反応を示すT細胞や抗体が試験管内で見つかっただけで、体内でどう働くのかはまだ不明だ。

 

新型コロナに実際に感染してもらう実験をすれば調べられるが、倫理上許されない。

仮説が正しいかどうかは、長期的に経過を見ていく中で解明される。

 

一方、交差反応する抗体が、かえってウイルスを細胞に感染させやすくしたり、異常な免疫応答を引き起こしたりする可能性もある。

新型コロナの重症化につながる可能性もまだ否定できない。   

 

参考・引用一部改変

朝日新聞・朝刊 2020.9.27

 

<参考・引用一部改変>

風邪でできた免疫が新型コロナに効果?

https://aobazuku.wordpress.com/2020/10/01/風邪でできた免疫が新型コロナに効果?/