夜中に何度もトイレ…就寝の習慣を見直そう
夜中に起きてトイレに行く。
その回数が増えて、眠れなくなったなどということはないだろうか。
こうした現象は加齢とともに増えていくが、不眠は尿のトラブルとも複雑に絡み合っているとされる。
2009年に全国で実施した、ある大学の疫学調査によると、調査対象の約3千人の成人のうち2割ほどが不眠を訴え、さらにその約8割が夜中に目覚めてしまうことが多い中途覚醒だった。
■ 加齢に伴い増加
夜、尿意を催して起きてしまうのも中途覚醒の一つの形だ。
尿トラブルでは、夜間頻尿が圧倒的に多い。
頻尿とは1日にトイレにいく回数が増える症状。
その中で夜、1回以上トイレに行く夜間頻尿は、40代の人で約4割、60代だと約8割の人に見られるという。
まず、昼夜ともに(何度も)トイレに行きたくなるのか、夜だけなのかをチェックすることが大切となる。
昼夜両方の頻尿には、泌尿器科系のトラブルや水分を多く取ることや病気などで尿量が多くなる多尿などが背景にある。
前者の代表的なものは急に尿意を催す過活動膀胱や、尿の出が悪く常に残尿感がある前立腺肥大などだ。
過活動ぼうこうは加齢などによって膀胱の尿をためる力が衰えて起きる排尿障害の一つ。
腎臓で作られる尿は正常な膀胱なら300~400ミリリットルためることができるが、過活動膀胱になると、100ミリリットルほどたまっただけでトイレが我慢できなくなり、その回数も増えるという。
男性特有の前立腺肥大症は、大きくむくんだ前立腺が尿の通り道である尿道を圧迫するため1回に排せつできる尿量が減る。
たとえば100ミリリットルしか排尿できなくなると200~300ミリリットルが膀胱に残るため、常に残尿感が消えない。
前立腺肥大は軽いうちは内服薬で治療できる。
出産などが原因で起きる女性の過活動膀胱は、尿道・肛門・腟を意識的に締めたり緩めたりを繰り返す骨盤底筋訓練で、ある程度軽減できる。
頻尿が夜だけの人のうち、夜の尿の量が多くなる夜間多尿は、加齢などによって心臓や血管のポンプ機能が衰え、重力で下がった水分が心臓や腎臓にもどれず下半身にたまってしまうことでも起きる。
就寝時に体を横たえたとき下半身にたまった水分が血管や心臓に戻る。
すると、夜間の尿量を制御している利尿ホルモンの分泌が誘発されてトイレに行きたくなるのだ。
夜、足にむくみなどがあれば、下半身に水がたまっている可能性がある。
寝る前に、日中、たまった水を出すことが大切だ。
就寝するおよそ3~4時間前に入浴するのも一つの方法。
湯船では水圧がかかる。
足が圧迫されて下半身にたまった水分が尿として出やすくなる。
湯上がりで皮膚から蒸発する水分も増える。
■ 下半身血流促す
ふくらはぎを動かすことで下半身の血流を促すウオーキングや、ふくらはぎのマッサージも頻尿対策につながる。
もちろん、就寝前には利尿作用のある飲み物を控えるのも大切だ。
頻尿が夜間だけで、ぼうこうや前立腺にも不調がないなら、不眠も原因と考えられる。
夜間に目が覚めてトイレに行きたくなるのは「寝すぎ」も原因かもしれない。一晩でグッスリと眠れる時間は個人個人で決まっており、6時間以上8時間未満というのが適正な正味の睡眠時間。
必要以上に長く眠ろうとするとかえって不眠になる。
睡眠が長くなりすぎると眠りが浅くなり、ちょっとした尿意で目が覚めることもある。
眠りの質を高めておけば、尿意で中途覚醒することも少なくなる。
ぐっすり眠るポイントの一つとしては多少眠くても、もう少し寝ていたいと思うくらいの睡眠時間で起きるくらいが良い。
睡眠が浅いと感じたら、あえてベッドで横になる時間を短くしてみるといいかもしれない。
夜間の頻尿には、心臓のトラブルや睡眠時無呼吸症候群などの疾病が隠れていることもある。
病気が隠れていなければ、生活を見直すことで、症状を改善できる可能性が出てくる。
◇ ◇
寝室などフットライトも活用
夜中に目覚めたときスムーズに眠りに戻るにはどうするか。
対策法としては、照明の使い方次第で睡眠への復帰も容易になる。
人間は目に強い光が入ると、脳や体が緊張して覚醒する。
例えば、夜中はフットライトで足元だけ照らしてトイレに行けるようにする手もある。
トイレでも、弱い光に落とせる照明を目の中に直接光が入らない位置で点灯すれば、夜中の安全と睡眠への復帰を後押しする。
最近は、コードレスで調光機能が付いた、手軽に使える小型の照明も増えてきた。
上手に使えば不眠の悩みにも役立ちそうだ。
参考・引用一部改変
日経プラスワン 2015.2.7
<関連サイト>
頻尿のタイプと対策