フェースシールド、小さな飛沫は100%近く漏れ スパコンで実験
新型コロナウイルスの感染対策として、一般の人でもフェースシールドをつける人が増えてきた。マスクに比べて息苦しくなく、口元も見えるという利点がある。だが肝心の予防効果は、低いようだ。
フェースシールドは接客業や、口の動きを見せたい語学講師、合唱団、飲み会の場など、コロナ禍で感染予防策として広がりつつある。
理化学研究所や神戸大などは、世界最高レベルの性能をもつスーパーコンピューター「富岳」を使った実験結果を、8月下旬に発表した。
不織布マスクをつけた場合と、フェースシールドをつけた湯合で、人の飛沫がどう広がるかをシミュレーションした。
不織布マスクでは、5マイクロメートル以下のエアロゾルは約3割漏れたが、50マイクロメートル以上の大きな飛沫は、ほぼ捕まえることができた。
一方、フェースシールドでは、エアロゾルは100%近くが漏れ、50マイクロメートルの飛沫でも半分が漏れた。
つまり、飛沫を飛ばさないという効果を考えると、不織布マスクに軍配があがる、という結果だった。
米フロリダアトランティック大の研究チームも9月上旬、飛沫がどう広がるかを視覚化し、流体物理の専門誌に発表した。
フェースシールドは、口の部分から前方まっすぐに飛沫が広がるのをある程度抑えるものの、左右や下からどんどん漏れ、10秒後には周囲約1メートルに広がった。
米疾病対策センター(CDC)は、フェースシールドはつけた人の目を感染から守るが、近くにいる人に飛沫を広げない効果は不明だと指摘。
新型コロナ対策として、フェースシールドをマスクの代わりに使うことを推奨していない。
<コメント>
この記事はあくまでも、フェースシールドを単独で用いた場合の感染拡大防止について検討したものです。
マスク特に不織布マスクとの併用や、感染防護の面からの検討ではありません。
記事の中の飛沫の広がりをスーパーコンピューターで行った実験で見る限り、併用はかなり効果が期待出来ます。
もう少し、深堀りした実験とするには、飛沫暴露予防についても検討すべきです。
そもそもフェースシールドは感染予防対策として考案されたものだからです。
個人的にも、日常診療で不織布マスクとフェースシールドとを併用しているので大いに興味があります。
つまり
① 先方が不織布マスクをしている場合での、不織布マスクとフェースシールドとの併用の感染防止効果
② 先方がマスクをしていない場合の不織布マスクとフェースシールドとの併用の感染防止効果
の検討です。
いずれにしろ、両者の併用は効果があること、感染防御には両者の併用が勧められるということが想定されます。
この論文はフェースシールドの効果を過小評価するネガティブなものです。
「両者の併用は効果がある」という結論の導き方でないと、スーパーコンピューター「富岳」が泣いてしまいます。
参考・引用一部改変
朝日新聞 2020.9.23
<関連サイト>
フェースシールドと不織布マスク