ファイザー、ワクチン使用申請へ 早ければ12月に許可
新型コロナウイルスのワクチンを共同開発している米製薬大手ファイザーとドイツのバイオ企業ビオンテックは20日、米食品医薬品局(FDA)にワクチンの緊急時の使用許可(EUA)を申請すると発表した。
従来と異なる新しいタイプのワクチンで高い効果が報告されているが、長期的な効果や安全性は未知数な面もある。
最終段階の第3相治験には4万3千人以上が参加。
①ワクチンを接種
②偽薬を接種
の二つのグループに分け、それぞれ2回接種した。
発症者は
① 8人
② 162人。
ファイザーは「95%の有効性があった」としている。
これをあてはめると、②の中で154人はワクチンを接種されていれば発症を防げた可能性があるということになる。
重症者10人のうち、ワクチンをうったのは1人だけだった。
65歳以上への有効性も94%以上だったとしている。
重大な安全上の懸念は報告されていない。
12月半ばには許可が出るとの見方もあり、同月内に米国内で高齢者や医療従事者らから接種が始まる可能性があるとしている。
英国や欧州では迅速に承認するための逐次審査を申請しており、日本や豪州、カナダでも申請を始めるという。
詳細な結果は今後、専門家による査読のある科学誌で発表するという。
年内に5千万回分、来年末までに13億回分の製造を予定している。
ファイザーのブーラCEOは、現時点ですでに2千万回分を製造しているとしている。
EUAは、ほかに手段がない場合に限り、承認などがされていない薬や検査でも一定の条件下で使用を認める米国の制度。正式な医薬品の承認を受ける前に、広く使えるようになるが、過去にワクチンでEUAが出たのはバイオテロ対策の炭疽菌ワクチンだけだ。
日本政府はファイザーから来年6月末までに6千万人分のワクチンの供給を受けることで基本合意している。
ウイルスなどの病原体の遺伝子の配列さえわかれば開発を進められるため、短い期間で早く開発できる利点がある。
異例のスピードで開発が進む背景にはこうした技術革新が大きい。
米製薬企業モデルナのワクチンも同じタイプで、発症を防ぐ効果が「94.5%あった」とする暫定結果が公表されている。
期待は大きいが、課題もある。
RNAは壊れやすく、ファイザーのワクチンは零下70度前後の超低温での保存が必要で、輸送の難しさが指摘されている。
ファイザーはドライアイスを補給すれば15日間保存できる輸送容器を開発。
GPS(全地球測位システム)や温度計を取り付けて、流通管理できるとしている。
保管の難しさもあり、特定の場所に接種対象者を集める「集団接種」が必要になる可能性がある。
こうしたワクチンはもともと緊急時を想定されていた。
流行地で対応にあたる医師や軍、行政関係者ら、限られた人数の感染のリスクを軽減するのがねらい。
何千万人もの規模を対象にすることは想定されていない。
治験の規模は数万人ほど。
より多くの人に接種されたときに、予想されなかった健康への影響が出てくるリスクもぬぐい切れない。
また、有効性がどれぐらい続くかは分かっていない。
そもそも新しいタイプのワクチンを数カ月で何千万人分もつくるのは、人類史上初めてのこと。
「急がは回れ」で、さまざまな側面からリスクを考えたうえで慎重に進めていく必要がある。
参考・引用一部改変
朝日新聞・朝刊 2020.11.21
<関連サイト>
RNAワクチン
https://aobazuku.wordpress.com/2020/11/23/rnaワクチン/