飛行機、新幹線は「密室空間」 コロナ禍の帰省リスクは

 

飛行機、新幹線は「密室空間」 コロナ禍の帰省リスクは

機内乗客の1割以上が感染

2020年3月下旬、旅行先の関西地方から沖縄県内に飛行機で戻ってきた乗客が、新型コロナに感染していることがわかった。

那覇市保健所が調査したところ、周囲の乗客への感染が次々と明らかになった。

 

機内での感染調査は、感染リスクの高い「患者の座席の前後左右2列」をまず調べるのが、国際標準だ。

この乗客は機内で激しくせき込んでいたがマスクを着けていなかったとみられ、16列も前の席にも感染者がいた。

最終的に乗っていた141人のうち感染者は少なくとも15人と、1割以上にのぼった。

 

海外でも3月、英国からベトナムへ向かう約10時間の便で、ビジネスクラスの乗客1人から、少なくとも12人に感染したと考えられる事例が報告された。

 

一方で、世界各国の航空会社が加盟する「国際航空運送協会(IATA)」は10月、今年1月以降に機内で新型コロナ感染が確認された乗客は少なくとも44人いるが、この間、航空機を利用した人は約12億人にものぼると報告した。

論文などで公表された事例をもとに集計したといい、沖縄の事例は含まれていない。

 

IATAの事務局長は「機内感染のリスクは、雷に打たれるのと同じくらい低いと思われる」とコメント。

仮に報告された事例が1割だけだったとしても、機内で感染する確率は270万分の1で、「極めて低いリスクだ」とした。

 

結局、機内での感染リスクをどう考えればいいのか。

 

渡航医学が専門の東京医科大の廣田篤郎教授は「多くの集団感染は警戒感の薄かった春先に起こっている。航空機の換気システムはかなり効率が良く、機内の条件よりも、感染者の行動の方が、影響が大きい印象がある」と話す。

 

高度1万メートルを飛ぶこともある航空機内は「密室」だ。

その分、強力な換気システムが稼働している。

 

全日本空輸ANA)の広報担当者によると、「約3分で機内の空気はすべて入れ替わる」という。

 

理化学研究所などがスーパーコンピューター「富岳」で行った計算でも、機内の空気は約3分で浄化された。

 

計算ではマスクを着けずにせきをした場合、飛沫は前後1列、左右4列ほどの客席に広がった。

 

ほかの乗り物はどうか。

 

新幹線も窓を開けられない「密室」だが、JR各社によると、列車内の空気を再循環させるとともに、外気も取り込んでおり、車内の空気は6~8分ほどで入れ替わるという。

 

バスについては、国土交通省が、観光バスや路線バスの換気性能をまとめている。

 

観光バスではエアコンをつければ、窓を閉めていても約5分、路線バスでは窓を開けた上で換気機能を使うことで、バスの大きさに関わらず約3分で車内の空気が入れ替わるという。

 

ただし車内が換気されていても、感染リスクがゼロになるわけではない。

 

東京都足立区は11月20日、区内の会社が主催した観光バスツアーで、参加者12人が感染したと発表した。

 

車内では参加者らが間隔をあけて座り、窓を開けて換気もしていたが、複数の参加者がカラオケをしていたという。

 

区によると11月末までに、さらに9人の感染が判明している。

 

席を予約する際は、近くに人がいない席を選ぶなども一つの方法だ。

コメント

観光バスツアーの予約の際にそういったことがはたしてできるのでしょうか。

そもそも観光バスツアーに参加すること自体に危険をはらんでいます。

 

ただ、いつもそのような環境を選べるわけではない。

もし、隣にせきをする人が座っていたらどうすればいいのか。

 

とにかく逃げるしかない。

席を変わる、次の停車駅で車両を変わるなどの方法がある。

 

感染症においては人の移動自体が感染を広げる要因になる。

結局は、刻々と変わる地域ごとの流行状況をしっかり見極めた上で自分で判断する必要がある。

 

参考・引用一部改変

朝日新聞・朝刊 2020.12.13

 

<関連サイト>

航空機内の空気

https://aobazuku.wordpress.com/2021/02/02/航空機内の空気/

 

飛行機の機内 換気はどうなっているのか?

https://trafficnews.jp/post/94403

・旅客機の機内は、一旦ドアが閉じられると、目的地に到着しドアが開くまで、外の世界とは隔離された状態となるため、換気は難しいようにも思われる。 

しかし、旅客機には、機内で循環する空気を清潔に保つため、高性能空気フィルターが備わっている。

 

・もちろん、それだけではウイルス感染が起こらないとはいえないため、JALでは、国際線の一部路線における日本到着後の夜間整備で、テーブルやひじかけ、トイレのドアノブや蛇口などをアルコール消毒しているほか、CAもマスク、そして飲食サービス時には手袋も着用、さらにラウンジ提供の食事、飲み物を個包装されたものなどに変更するといった対策を講じている。