コロナ後遺症、外来に続々 強いだるさやせき「出口見えぬ苦しさ」、検査受けられなかった人も
新型コロナウイルスに感染した後、強いだるさや熱、呼吸苦などの症状に、長い間苦しむ人がいる。
いわゆる「コロナ後遺症」だ。
医療機関が対応を始めている。
のどに何かが突き刺さったような違和感と、これまでに経験したことがない疲労感。
昨年8月に新型コロナに感染した横浜市の女性(46)は、長引く体調不良に不安を抱えている。
軽症との診断だったが、10日間入院。
退院後も体調が戻らない。
職場復帰したが、定時で仕事を切り上げても、残業を数時間こなしたような疲れが残る。働き盛りだけに、「この状態が一生続くのか」と心配は尽きない。
1日50~80人に
東京・渋谷の雑居ビルの一角にあるHクリニックは昨春、「コロナ後遺症外来」を始めた。
新型コロナ感染症にかかった後も体調不良に苦しむ患者が全国から押し寄せる。
H院長(42)によると、オンラインも含め、毎日50人から80人を深夜まで診察し、受診者は1千人を超えた。
男性より女性が多く、年代別では20代から40代が中心という。
患者の多くが体のだるさや痛み、頭痛、息苦しさを訴えている。
「出口が見えない苦しみに、気分の落ち込みを訴える人も少なくない」とH院長は話す。
症状に応じて薬を処方するなどしているが、まだ確立された治療法はなく、手探りのところもある。
H院長は一定割合の患者に「筋痛性脳脊髄)炎 / 慢性疲労症候群(MEDICINA / CFS)に似た症状が見受けられる」と言う。
ME / CFSは、強いだるさとともに日常の活動能力が低下。
集中力や注意力が散漫になり、ふらつきが見られることもある。
脳内の神経炎症も起きているとされる。
ME / CFSは、これまでヘルペスや風疹などのウイルス感染症が治った後に発症する人がいることがわかっている。
カナダでは2003年にSARSウイルスの感染が相次ぎ、感染から1年以上後の調査では、感染者273人のうち少なくとも22人にME / CFS様の症状があったという。
SARSウイルスと新型コロナウイルスは遺伝子の約8割が共通しており、ME / CFSは十分に起こりうる、と指摘する専門家がいる。
一方で、ME / CFSを「コロナ後遺症」とみるかどうかについては、原因の見極めが難しく、慎重な意見がある。
また、Hクリニックの受診者には、昨春の「第1波」の時に発熱やせきに苦しんだものの、保健所に相談してもPCR検査を受けることができなかった人が少なくない。
東京都の女性(29)は昨春、発症11日後にやっとPCR検査を受けられた。
結果は陰性だったが、毎日1~3時間動くと疲れ、パソコンにも長時間向かえず、休職せざるを得ない状況が続いている。
女性は「新型コロナと認められず、つらい思いで症状とたたかっている私たちの存在を知って欲しい」と話す。
■ 大学病院も対応開始
後遺症を訴える患者の対応に動き出す大学病院も出てきている。
岡山大病院は2月15日、「コロナ・アフターケア外来」を開いた。
医療機関からの紹介制で、総合内科・総合診療科の医師が担当する。
元来、総合診療科は症状の多様性への対応を得意としている。
後遺症を診る医療機関が少ない中、皮膚科、精神科や耳鼻咽喉科など様々な診療科と連携しやすい大学病院として、受け皿になる必要を感じた結果という。
「コロナの後遺症なのか持病の悪化なのか。まずしっかり見極める必要がある」と関係者は話す。
週2回の外来に対して既に10件近い予約が入っているという。
「開設直後から紹介患者が多く、社会的ニーズを感じる」という。
受診する患者のプライバシーに配慮して、どの診察室か特定されないようにするなど、工夫している。
聖マリアンナ医科大学病院(川崎市)は1月、「新型コロナウイルス感染症後外来」を開設した。
診断後2カ月を超えてもつらい症状がある人を診ることにしている。
診療所などからの紹介状が必要だ。
北里大学東洋医学総合研究所(東京都港区)も、「漢方オンライン風邪外来」で「コロナ後遺症」の診療を始めた。
ウイルス検査で陰性だったが体調不良が続く人も診るという。
感染制御研究センター長の教授は「一人でも多くの人を治したい」と話す。
ただこうした医療機関はまだ少ない。
まずかかりつけ医に相談して、いない場合には、コロナ診療をしている病院の総合診療科や内科を受診するといい。
厚労省は後遺症について、「呼吸器」「症状全体」「味覚・嗅覚」のテーマ別に研究班を立ち上げている。
成果がまとまり公表されるのは4月以降になりそうだという。
参考 新型コロナウイルス感染から長く続く症状の例
・脱毛
・頭痛
・せき
・全身のだるさ
・脳や神経の症状
・嗅覚・味覚症状
・発熱
・呼吸が苦しい
朝日新聞・夕刊 2021.3.2