新型インフルエンザと脱毛

回復後に脱毛、報告相次ぐ 性別や世代を問わず確認 

新型コロナウイルスの流行が長期化する中、感染して回復した後に、髪の毛の脱毛に悩む人がいる。

国内外で、後遺症とみられる脱毛の報告が相次いでいる。

なぜ、脱毛は起きるのだろうか。

 

大阪市総合医療センター(大阪府豊島区)ではコロナに感染して退院した後、脱毛や倦怠感などを訴える患者が少しずつ増えている。

脱毛は性別や世代を問わず確認されており、「クシで髪をとかしたら、ゴソッと毛が抜けた」といった訴えが続いている。

 

当初、当センターの担当医は、治療に使っていたアビガンやベクルリーなどの薬の副作用が原因かもしれないと考えたが、薬の服用から数カ月経った後や薬をのんでいない軽症の患者からも、脱毛の訴えがあった。

 

かぜやインフルエンザの患者からは脱毛の報告はほとんどみられない。

新型コロナと脱毛との因果関係は明確にわかっていないが、感染と何らかの関係があると考えられる。

 

脱毛などの後遺症とみられる症状は、国内外で報告が相次ぐ。

 

国立国際医療研究センター(東京都新宿区)などが昨年10月に国際医学誌に発表した論文では、同センター病院に新型コロナ で入退院した63人に聞き取ったところ、確認できた58人のうち24%にあたる14人(男性9人、女性5人)に脱毛の症状が確認された。

症状が出たのは、コロナを発症してから平均2カ月後だった。

調査時点で、脱毛がおさまった5人の持続期間は、平均で76日だった。

 

中国の研究チームが今年1月に英医学誌ランセットに発表した論文では、武漢の病院を退院し、新型コロナ発症から約半年経った約1700人を調べたところ、何らかの症状を訴えた人は全体の76%に上った。うち脱毛は22%だった。

 

和歌山県が昨年11月に公表したアンケートでも、感染した163人のうち、退院後に何らかの症状があった人は75人(46%)に上った。

このうち、嗅覚障害が30人(18%)、倦怠感が26人(16%)、味覚障害と呼吸困難感が各20人(12%)、頭痛が16人(10%)、脱毛が12人(7%)いた(重複回答あり)。

 

脱毛について詳しくみると、男女は同数の各6人で、年代別では50代が最多の5人、20代、30代、60代が各2人で幅広い世代で確認された。

重症と軽症では、脱毛がある人の比率はほとんど変わらなかった。

つまり、若者でも軽症でも脱毛になることがあるということだ。

脱毛はショックが大きい人もおり、予防を怠らないようにしたい。

 

新型コロナに感染して脱毛が起きるのは、なぜなのだろうか。

 

「コロナ抜け毛相談窓口」を設けている「クレアージュ東京 エイジングケアクリニック」(東京都千代田区)や、国立国際医療研究センターなどの論文が原因の一つとして指摘するのは、「休止期脱毛症」の可能性だ。

 

一般的に髪の毛は、全体の約9割が成長期、約1割が数カ月間の休止期にあたるとされる。

休止期に入ると毛の成長が止まり、毛が抜けやすい状態になる。

 

休止期脱毛症になると、休止期に入る髪の毛が増え、脱毛が増える。

その引き金は、高熱や精神的ストレス、感染症などが指摘されている。

多くの場合は、新しい髪の毛が自然と生えてくる。

 

詳しいメカニズムの解明はこれからだが、感染によって体力を消耗し、免疫力が落ちることによって髪の毛に栄養が届きにくくなり、脱毛につながっている可能性がある。

回復後は十分な休養をとって体の状態を元に戻すことを心がけたい。

 

参考・引用一部改変

朝日新聞・朝刊 2021.3.21