コロナ治療薬、年内にも 

コロナ治療薬、年内にも 

米メルクなど治験終盤に 開発競争、世界で加速

新型コロナウイルスの新型治療薬が年内にも登場する見通しが強まっている。

米メルクやスイスのノバルティスが開発競争をリードし、ワクチンで先行した米ファイザーも経口投与型の新薬の臨床試験(治験)を始めた。

日本勢もアンジェス塩野義製薬の新薬候補が海外で第2段階の治験に進む。

ワクチンに比べ難航してきたが、病態の解明が進み、新薬開発が加速してきた。

 

新型治療薬の開発で注目を集めるのは米メルクだ。

すでに2種類の治療薬候補の治験が終盤にさしかかっており、2021年末にも米国で使用が始まる可能性がある。

重症患者の回復を助け、呼吸不全と死亡のリスクを50%減少させる可能性があるものと、陰性になるまでの期間を短縮できるとされる新薬候補の2種類だ。

日本でも3月に治験を始めた。

 

ノバルティスはスイスのスタートアップ、モレキュラー・パートナーズと抗ウイルス薬の共同開発を進めている。

今夏にも最終となる第3段階の国際共同治験を始め、年内の実用化を目指す。

抗ウイルス薬「レムデシビル」や、米イーライ・リリー、米リジェネロンが開発するコロナ特化型の新薬候補などとともに、米国政府が特に実用化を後押しする新薬候補のひとつに選ばれた。

英オックスフォード大の研究者らが運営する「アワー・ワールド・イン・データ」によると、世界の新型コロナ感染者は1億2700万人を超えた。新規感染者はワクチン接種が始まった1月をピークに米国や英国で減少に転じたものの、3月に入りブラジルやインドで再び増加し始めた。

日本でも感染拡大「第4波」の懸念がある。ファイザーのミカエル・ドルステン最高科学責任者(CSO)は「世界的な大流行(の封じ込め)にはワクチンと治療薬の両方が必要だ」と話す。

                                    

医薬品の治験は健常な人で安全性を確認する第1段階、少数の人で最適な投与量と有効性を確かめる第2段階、多数の人で有効性を確かめる第3段階からなる。

第3段階は製品化前の最終段階といえ、製薬会社はこの治験データを規制当局に提出して

製造販売や緊急使用許可の承認を受ける。

 

ファイザーも治療薬の開発レースに参入した。3月、経口タイプの新薬の治験を米国で始

めたと発表した。

新型コロナが体内で増殖するのに必要な「プロテアーゼ」という酵素を阻害する。

米国の治験登録データベースによると、治療薬候補の治験は全世界で1500件を超える。英アストラゼネカやスイスのロシュなども参入し、様々な治療薬の開発が進む。

 

日本企業も競争に加わっている。大阪大学発バイオ企業のアンジェスはカナダ企業と共同開発中の重症化予防の治療薬について、近く第2段階の治験を始める。

塩野義は高齢者の重症化を防ぐ新薬候補について提携先の米バイオ企業が第2段階に進むと発表した。

富士フイルムホールディングスも「アビガン」の臨床試験を進めている。

 

組み合わせカギ

これまで実際に治療薬として承認された医薬品は、抗ウイルス薬のレムデシビル、抗炎症剤デキサメタゾンなど一握りだ。

ほとんどが既存薬からの転用で、当初は特効薬と期待された抗エイズウイルス(HIV)薬や関節リウマチ薬などは治験で有効性を証明できず、承認に至っていない。

実用化が進むワクチンと比べ治療薬の開発スピードは鈍かった。

しかしこの1年で、新型コロナの遺伝子解析や病態解明が進み、ウイルスの増殖、炎症の抑制、血栓の形成阻害、免疫の暴走抑止など複数の効果を持つ薬剤を組み合わせることが有効だと分かってきた。

より有効な治療薬の組み合わせを見つけるためにも政府、製薬会社、研究者が情報を全世界で共有しながら、様々なタイプの医薬品開発を急ぐことがコロナ制圧への近道となる。

 

参考・引用一部改変

日経新聞・朝刊 2021.4.4

 

<参考サイト>

各社が開発中の主な新薬候補

https://aobazuku.wordpress.com/2021/04/06/各社が開発中の主な新薬候補/

 

<コメント>

新型コロナの治療薬に限らず、医薬品の開発で商品化までに漕ぎつけるのはごく一部です。

治験を行うにも対象者が少なければ座礁してしまいます。

希少疾患などの治験はどうやって行うのか不思議なくらいです。

感染症の治療薬も、その感染症の流行期に企画しても、治験がスタートする頃には沈静化していることがあります。

今回の新型コロナのように第1波、第2波、第3波と「いい波」に乗らなければなりません。

まるでサーフィンのようです。

少なくとも、諸外国と比較して日本のように比較的(相対的)に新型コロナの流行が少ない地域での治験は当然のことながら不利となります。

研究でも同じです。

最近、国内で「コルヒチンという痛風の治療薬を使った新型コロナの治療についての研究がスタートした」という報道がありました。

その直後、ブラジルから同様の主旨の研究が論文として発表され(てしまい)ました。

 

参考

武田のコロナ薬 治験目標達せず

http://osler.jugem.jp/?day=20210406