新型コロナワクチン 利点やリスク、総合的に判断を
新型コロナワクチンの高齢者への接種が始まった。
以下は、日本ワクチン学会理事長の岡田賢司・福岡看護大教授による有効性、副反応などについての解説。
――日本で接種される予定のワクチンについて教えて下さい。
・日本政府は米ファイザー、米モデルナ、英アストラゼネカの3社とワクチンの供給契約を結んでいる。
どれもインフルエンザなど、ウイルス自体を使った従来のワクチンとは違う、新しいタイプだ。
現在、日本で接種できるのは、厚労省が2月、製造販売を特例承認したファイザー社製のみ。
・ファイザーのワクチンはmRNA(メッセンジャーRNA)といって、ウイルスの表面たんぱく質を作る遺伝子の一部を体の中に入れて、ウイルスの表面たんぱくをつくらせる。
この表面たんぱくは、ヒトには異物のため、免疫細胞がこれに対抗する免疫をつくり、本物のウイルスが侵入して来た時に攻撃する。
体内に入れる遺伝子配列を変えることで、ウイルスの変異にも対応しやすいとされる。
・ほかのワクチン は厚労省の審査中で、いつから打てるようになるのか分からない。
また、供用が開始されても、現段階では自分では選べない。
――よく聞く「有効性が高い」とはどういった意味でしょうか。
・臨床試験(治験)では、ワクチンを打った人と打っていない人を比べて、どのぐらい発症するリスクがあるかを調べる。
ファイザーのワクチンは国内外の治験で、有効性が95%とされる。
つまり、接種した人はそうではない人と比べて、発症リスクが20分の1に減ったということ。
インフルエンザのワクチンでも有効性は60%程度なので、非常に高いことがわかる。
■ 3社と供給契約、国内接種始まる
――副反応への不安も強いです。
・日本人は国民性からかゼロリスクを求めてしまうが、どんなワクチンでも副反応は生じる。
ファイザーのワクチンは国内の治験で、2回目の接種後、37.5度以上の発熱35.6%、倦怠感67.3%、頭痛49.0%などが報告されている。
一方、世界中でこのウイルスに感染して亡くなった人はたくさんいるが、このワクチンを接種したことが原因となって死亡した例は報告されていない。
・じんましんや息苦しさなど重いアレルギー反応の「アナフィラキシー」が起こる可能性はある。
海外では、100万接種あたり、4から5回とされている。
国内の医療関係者の先行接種では、さらに頻度が高いが、専門家が本当にアナフィラキシーに該当するのかどうか調べている。
アナフィラキシーの9-%は接種から30分以内に起こるので、花粉症などアレルギーの既往歴がある方にはその間、接種会場にとどまるよう勧めている。
通常は、迅速かつ適切に対処すれば、後遺症もなく、回復する。
■ マイナス情報も、国は迅速公開を
――中長期的な副反応や効果の持続性はいかがですか?
・世界中で接種が始まってまだ1年もたっていないので、分からない。
しかし、mRNAは体内では数日間で全部分解されるとされている。
また、遺伝情報(DNA)からmRNAは作られますが、mRNAがDNAに入り込み、遺伝子に影響を及ぼすことは、現在の学問上はありえない。
効果の持続性も分からないが、ファイザーは4月、ワクチンの2回目の接種から半年後までの有効性は91.3%で、南ア型の変異ウイルスにも有効とする新たな治験結果を発表した。
――新型コロナの流行前の生活にはいつごろ戻れますか。
・ワクチンを打っても、発病する人はまれですがいる。
未接種の人を守る必要もある。
マスク着用や「密」を避けるなどの感染対策は当面、続けなければならない。
多くの専門家は季節性のインフルエンザのようになるには、2、3年はかかるという。
大切なのは、この感染症はワクチンによって、予防できる病気になったということ。
ワクチンを打つメリット、副反応、病気にかかって亡くなるリスクの三つを総合的に考えて、打つか、打たないかをご自身で考えて決めることが、いま求められていることだと思われる。
そのためにも、国はたとえマイナス情報であっても、迅速に公表することが重要となる。また、様々な事情で接種しない人、できない人がいる。
未接種者に対する差別は絶対にやめよう。
参考・引用一部改変
朝日新聞・朝刊 2021.4.17
<関連サイト>
新型コロナワクチン接種にあたって考慮する三つの要素
https://aobazuku.wordpress.com/2021/04/19/新型コロナワクチン接種にあたって考慮する三つ/