目の水晶体はなぜ透明? 

目の水晶体はなぜ透明? オートファジーとは別のメカニズム解明

目の水晶体(レンズ)がうまく光を通すには、水晶体細胞の中の核や小胞体などの小器官が全て分解されて透明でなければならない。長年謎だったその仕組みを解明したと、東京大のチームが14日付の英科学誌ネイチャーに発表した。細胞内の小器官を分解する仕組みは、2016年にノーベル医学生理学賞の授賞対象となった「オートファジー」が知られているが、これとは別の働きだという。

 

 

目の水晶体(レンズ)がうまく光を通すには、水晶体細胞の中の核や小胞体などの小器官が全て分解されて透明でなければならない。長年謎だったその仕組みを解明したと、東京大のチームが14日付の英科学誌ネイチャーに発表した。細胞内の小器官を分解する仕組みは、2016年にノーベル医学生理学賞の授賞対象となった「オートファジー」が知られているが、これとは別の働きだという。

 

 

 生物の細胞の中では、不要になった小器官がオートファジーによって分解され、新たな器官に再利用されて生命維持に役立っている。この仕組みに関わる遺伝子を特定し、分子レベルで解明した大隅良典・東京工業大栄誉教授はノーベル医学生理学賞を受賞した。

 

 一方、目に入ってくる光を屈折させて網膜に集める役割を担う水晶体も、成熟する過程で核やミトコンドリアなど細胞内の小器官が全て分解されて透明になることが約100年前から知られていた。しかし、オートファジーの機能を失わせたマウスの胎児でも正常な水晶体ができ、その仕組みは未解明だった。

 

 水島昇・東大教授(細胞生物学)らの研究チームは、生きた状態で細胞や組織を観察しやすいゼブラフィッシュを使い、水晶体細胞で小器官が分解される際に多く発現する約60種類の遺伝子を特定。各遺伝子の機能を失わせて実験を繰り返した結果、脂質の代謝を促す酵素の一種が関わっていることを突き止めた。この酵素が働かないと、水晶体が混濁する白内障や光の屈折異常が起きたという。

 

 マウスでも別の脂質代謝酵素を働かなくすると、同様の混濁や屈折異常が起きた。こうした酵素は哺乳類を含む脊椎(せきつい)動物が持っており、酵素が関わる分解の仕組みが備わっていることが明らかになった。

 

 水島教授は「細胞生物学や発生学に残されていた大きな課題の一つが解明できた。水晶体以外にもこの酵素は存在しており、オートファジーとの違いや関連性を解明することで、細胞内での分解機構についてさらに解明が進むだろう」と話している。

 

参考・引用一部改変

毎日新聞 2021.4.15

 

 

<関連サイト>

なぜ眼の水晶体は透明になるのか?、東大がその仕組みを解明

https://news.mynavi.jp/article/20210416-1872573/