新型コロナ 薬がよく効くのは発症後2日程度

薬がよく効くのは 発症後2日程度 数理モデルで解析

新型コロナウイルス感染症を発症後、薬がよく効く期間は2日程度で、類似ウイルスのSARS重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)より大幅に短いことが九州大や米インディアナ大などの研究でわかった。

最適な投薬タイミングを計ったり、十分な効果が見込めない治療を止めたりすることにつながる成果という。

 

インフルエンザなどの感染症治療では、体内でウイルスが増え、ピークを迎える前に投薬を始めなければ効果が下がることが知られている。

新型コロナでも、患者ごとに治療の効果や回復にかかる時間が大きく異なり、最適な投薬のタイミングは十分にわかっていなかった。

 

九大の岩見真吾・前准教授(異分野融合生物学、現・名古屋大教授)らは新型コロナ患者の体内のウイルス量に注目した。

上気道(鼻やのど)のウイルス量を長期間調べたドイツやシンガポールなどの患者30人の記録を収集。

同じコロナウイルス科のウイルスが原因のSARS患者14人、MERS患者13人のデータも集め、ウイルスが体内の細胞に感染して増殖する様子を最新の数理モデルで解析した。

 

その結果、発熱などの発症からウイルス量がピークを迎えるまでの時間が新型コロナ患者では約2日間だった。

SARSでは3倍以上の7日間、MERSでは12日間あったという。

 

さらに新型コロナの体内での増殖モデルをつかって投薬の効果をコンピューターでシミュレーションすると、発症1日後の投薬ではウイルス量がすぐに減るなど効果が大きかったが、発底4日後の投薬では効果が小さくなることが確認された。

 

こうした結果から、新型コロナでは症状が出てから治療が特に有効な期間は2日程度しかなく、時間がたった人には投薬による十分な効き目が望めないことが明らかになったという。

 

新型コロナをめぐっては、同じ治療薬の複数の治験の結果が大きく異なる例があるとされる。

研究チームは「本当は有効な薬でも、投薬を始めるタイミングが遅すぎて効果が見られないだけかもしれない」と指摘する。

 

長崎大を中心に現在進められている新型コロナの投薬の治験では、岩見さんらの研究成果を生かし、発症間もない患者への投与は進める一方、発症から時間のたった患者の治験参加は見送られているという。

 

岩見さんは「数理モデルと各国の症例を合わせれば、治療に有効な知見が早急に得られることが証明できた。データを充実させて精度を上げていければ」と話している。 

 

参考・引用一部改変

朝日新聞・朝刊 2021.4.25

 

<関連サイト>

発症後2日でウイルス排出量ピーク、新型コロナ治療が困難な理由を解明

https://www.carenet.com/news/general/carenet/52020

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九州大学大学院の研究グループは、米国インディアナ大学公衆衛生大学院の研究グループとの共同研究により、SARS-CoV-2を特徴付ける感染動態の1つとして、生体内におけるウイルス排出量のピーク到達日数が既知のコロナウイルス感染症よりも早く、この特徴がゆえに、発症後の抗ウイルス薬による治療効果が限定的になっていることがわかった。

 

新型コロナ、無症状者のウイルス排出量と臨床経過

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https://www.carenet.com/news/journal/carenet/49732

新型コロナウイルスへの感染が確認された成人入院患者について調べたところ、高齢、高Sequential Organ Failure Assessment(SOFA)スコア、Dダイマー値1μg/L超が、院内死亡リスク増大と関連することが示された。

また、生存者のウイルス排出期間中央値は20.0日であった。

 

新型コロナのウイルス排出量のピークは発症後2日程度、九大などが確認

https://news.mynavi.jp/article/20210323-1829417/

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九大、京大、東大、科学技術振興機構日本医療研究開発機構の5者は3月23日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する抗ウイルス薬剤治療がほかのコロナウイルス感染症と比較して困難である理由の1つとして、発症後2日後という早い段階で細胞から上気道へと排出されるウイルスの量がピークに達するためであることを明らかにしたと発表した。