コロナで体力低下 ③

コロナで「動かない生活」 体力低下で死亡リスク高く ③

活動の低下は認知症やがんとも関係する?

脂肪筋が悪さをして糖尿病への入り口を開く、そしてその脂肪筋を減らすためにも運動が大事だということはわかったと思う。

 

しかし、実はそれだけではない。

歩くことなど日常の運動は、もっと深刻なリスクを減らすこともあるようだ。

それは「認知症」と「がん」だ。

 

糖尿病が認知症のリスクになることは、数多くの研究によって示されているが、メタボの中年男性において大脳の白質という部位にわずかながら変性が起こり、認知機能低下などにつながるリスクが40代から始まっているかもしれないということが、スポートロジーセンター(放射線診断学)の研究で明らかになった。

大脳の白質は、神経細胞のネットワークに重要な部分。

変性が起こると認知機能の低下や脳梗塞リスクとなる可能性がある。

 

認知症のリスクとして大きいのは加齢だ。

長寿となれば誰にでも起こりうる病気と考えるべきだ」というが、メタボや活動量の低下によって40代からそのリスクを抱えるのはたまったものではない。

しかし、この認知症は、運動によってそのリスクを低減できることが明らかになっている。

 

中年期の男女を対象に身体活動とその後の認知症およびアルツハイマー病の発症との関連を平均21年間追跡したスウェーデンの研究では、少なくとも週2回以上の身体活動が、アルツハイマー病を0.38倍、認知症を0.48倍に低下させた。

研究者は「定期的な身体活動は、認知症アルツハイマー病のリスクを軽減するか、発症を遅らせる可能性がある」とコメントしている。

 

また、身体活動は、年齢とともに発症率が増える「がん」のリスクも低下させることがわかっている。

米国およびヨーロッパにおいて約144万人の男女(平均年齢59歳)の身体活動レベルと13のがん発生率を解析したところ、身体活動は多くの種類のがんリスクの低下と関連していたという(食道腺がん、肝臓がん、肺がん、腎臓がん、胃がん、子宮がん、骨髄性白血病、骨髄腫、大腸がん、頭頸部がん、直腸がん、膀胱がん、乳がん)。

この関連は、BMIや喫煙歴とは独立したもの、つまり、身体活動が高いことによってがんリスクが低下するということを示しているのだ。

 

認知症というと、シニア世代になってから指先を使ったり、頭の体操で計算をしたりすれば予防できるのでは、と考えている人がいるが、そうではないのではという考えもある。

認知症もがんも、運動してさえいればかからない、というわけではないが、活動量低下がさまざまな病気のリスクとなっているのは明らかだ。

いつまでも健康でいるために自分でできることとして、体を動かすことは大変有効なことといえる。

 

筋肉の状態が健康かどうかが重要

糖尿病やメタボなど、老化とともに増えていく病気の発症を防ぎ、死亡リスクを低く抑えるためにも、私たちはもっと体を動かすことによって「筋肉の健康度を高める」ことを意識したい。

 

やせメタボの人であっても、太り気味の人であっても、筋肉の状態が健康であるかどうかは重要なファクターとなっている。

 

筋肉の状態と必要な運動について、次のような考え方がある。

 

●筋肉のインスリン感受性を高めるメタボ改善のためには、有酸素運動

●筋肉の量を増やし、筋力を高めるフレイル(注)予防のためには、筋トレ

(注)「フレイル」とは、加齢にともなって心身の活力(運動機能や認知機能など)が低下し、心身の脆弱性が起こる、介護が必要になる前段階のこと。

 

中高年期にはメタボ化が進むが、シニアに移行するにつれ、筋肉量が減り、筋力も低下する“フレイル” のリスクが高まっていく。

メタボ対策はもちろん、生涯において活力ある状態を維持するためには、フレイル対策もしっかり意識したい。

ウオーキングや自転車などの有酸素運動をまずは実践して、徐々に筋トレも加えていこう。

とにかく無理なく継続できることが大切だ。

 

参考・引用一部改変

日経Gooday 30+ 2021.5.29