痛風 正しく理解し注意 コロナのストレス・運動不足でリスク増
減量には有酸素運動を/無症状でも服薬続けて
新型コロナウイルスの感染拡大で痛風につながる高尿酸血症のリスクが高まっている。
在宅勤務や外出自粛で運動不足になったり、食生活が乱れたりしやすいためだ。
痛風の患者は年々増加しているが、予防・治療法には「誤解」も多い。
正確な知識で発症を抑え、不安を解消したい。
痛風の発症はこれまで、季節の変わり目の春やアルコール摂取が増える夏が多かった。
コロナ禍で秋以降も注意が必要になりそうだ。
専門家は警鐘を鳴らす。
食生活の乱れと運動不足は、高尿酸血症の患者にとって最も注意すべき点だ。
在宅勤務でストレスもたまり、飲酒量が増えやすくなっている。
日本酒1合、ビールなら350~500ミリリットルといった1日の目安をできるだけ守りたい。
患者のなかには「プリン体ゼロとされる焼酎などの蒸留酒を飲んでいるから大丈夫」と考える人も多い。
しかし、それは誤解。
アルコールを大量に飲めば痛風の危険性を高めることに変わりはない。
アルコール自体が血中の尿酸を増やしやすいのがその理由だ。
実は体内にある尿酸のうち、飲食物からのプリン体摂取によるのは2割程度。
8割は体内で合成され、一定量たまったら尿や汗、便と一緒に排せつされる。
大量のアルコールは合成や排せつのバランスを崩すおそれがある。
プリン体は肉類や内臓、魚介類に多く含まれるが、気にしすぎると食の楽しみが薄れる。
食べ過ぎを防ぎ、主食と主菜、副菜のそろった栄養バランスの良い食事を心がけるべきだ。
そうすれば自然と食物由来のプリン体摂取量は適正になる。
食べ過ぎ防止のコツは、野菜や海藻・キノコ類を積極的に取り入れ、ボリュームを増やせば満足度が上がる。
水やお茶など水分を十分にとれば尿量が増え、尿酸の排せつを促すことができる。
肥満気味の人は減量も欠かせない。
減量などで内臓脂肪が15%以上減少すると尿酸値が下がる。
ただ、筋肉トレーニングなどの無酸素運動は体を動かす際に使われるATP(アデノシン3リン酸)を分解させ、体内の尿酸を増やす。
尿酸値を下げるための減量にはジョギングやサイクリングなどが勧められる。
医師から処方された尿酸降下薬は継続して飲む必要がある。
高尿酸血症は痛風発作(関節炎)が起きない限り自覚症状がなく、途中で薬をやめる人が多い。
その割合は約75%と高血圧や糖尿病の患者(40%程度)に比べて大幅に高い。
コロナ禍で外出がしにくくなったほか、感染を恐れて通院を控える動きも出ている。
しかし、服薬を中止すると2週間で尿酸値が元の値に戻る。
3年以内に発作が再発する確率も高まる。
高尿酸血症を放置すると、腎臓や心臓血管に悪影響を及ぼし、尿路結石や腎臓病につながる懸念もある。
服薬は生涯続ける必要があるとされるが、尿酸値が安定している場合は医師と相談し、いったん中止するケースもある。
自分の判断だけでやめるのは避けるべきだ。
新型コロナの治療薬候補のなかには尿酸値を上げたり、尿酸降下薬との併用で悪影響が出たりする薬があるとの報告もある。
コロナに感染した場合、痛風・高尿酸血症で治療中であることを医療従事者に伝えることが重要だ。
参考・引用一部改変
日経新聞・夕刊 2020.9.9
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