コロナワクチン 広がる接種 「12歳以上」どう考える
新型コロナウイルスのワクチンの対象が「12歳以上」にも広がり、一部の自治体では接種が始まっている。
子どもの場合、副反応の頻度は大人より高く、わずかだが心筋炎や心膜炎の報告がある。
一方、感染時に重症化を防ぎ、感染の広がりを抑える効用は大きい。
■「重症化予防に意義」 小児科学会
ワクチンの効果や安全性についてのデータは大人に比べると少ないものの、ファイザー製の場合、海外の治験では16歳以上と同様の発症予防効果が示されている。
子どもの場合、感染しても無症状や軽症であることが多いとされているが、極めてまれに重症化する。
川崎病に似た症状がみられる小児多系統炎症性症候群(MIS-C)で、欧米では死亡例もある。
日本川崎病学会によると、国内でも感染して数週間後に入院した症例報告が少なくとも4件ある。
12~15歳への接種が動き出すのに合わせ、日本小児科学会が6月に示した見解では、重い基礎疾患がある子どもへの接種は重症化予防の効果があるとする。
健康な子どもの場合も、重症化予防や重症化しやすい高齢者にうつさないといった観点から、接種の意義はあるとしている。
感染し、軽症の場合でも、大人の例をみると相当なつらさを自覚する人が多く、発症予防のメリットは大きい。
新型コロナに感染すると、自宅や宿泊療養施設、病院で、少なくとも10日間程度の隔離が必要だ。
■ 副反応、心筋炎・心膜炎は極めてまれ
副反応など、接種に伴うデメリットを子ども本人と保護者が十分に理解することも大切だ。
海外の臨床試験では、12~15歳で、特に2回目の接種後に強い痛み(78.9%)や疲労感(66.2%)、頭痛(64.5%)、悪寒(41.5%)を訴える人がかなりの割合で報告されている。
また、集団会場で接種の後に突然卒倒したり、失神したりする「血管迷走神経反射」も、まれではあるが比較的若い世代に起こりやすいとされる。
接種時の緊張や痛みをきっかけに起きる体の反応だ。
接種後にベッドに横になったり、椅子にゆったりと座ったりして休息をとることで、多くの人は回復する。
学会は接種前から後まで細やかな対応が必要で、集団接種よりも、かかりつけ医などでの個別接種が望ましいとしている。
ワクチン接種後、ごくまれに心臓の筋肉に炎症が起きる心筋炎、心筋を覆う膜に炎症が起きる心膜炎が、ファイザー製とモデルナ製のワクチンで報告されている。
日本循環器学会によると、一般的に急性の心筋炎・心膜炎は、細菌やウイルスの感染によって起こることが多い。
胸の痛みや息苦しさ、発熱などが最初の症状で、血液検査や心電図、心エコーなどで診断される。
軽症の場合は予後は良好という。
2回目の接種後に多く、若い男性に多いのも特徴だ。
厚生労働省は、接種後おおむね4日以内に胸の痛みや息切れを感じた場合は医療機関を受診するよう求めている。
ただ、頻度は極めて低い。
米疾病対策センター(CDC)によると、米国では6月11日までに約3億回のワクチンが接種され、心筋炎などが疑われる例が1200件あまり報告された。
100万回あたり約4件になる。
また、詳しく調べた30歳未満の323件のうち、309件は入院したものの、ほとんどは回復していたという。
CDCは「引き続き12歳以上の全ての人に接種を推奨」とする。
一方で、コロナ感染後の発症例もデータが集まってきた。
国内の入院患者約3万88千人あまりのデータを調べると、33人が心筋炎などを合併していた。
頻度は男性で100万人あたり1048人、女性で同607人となる。
しかし、「コロナ感染による心筋炎の方が圧倒的に頻度が高く、ワクチン接種のベネフィット(利益)は明らかだ」と、ある専門家は話す。
コメント
記事の中で、16歳以上と12歳~16歳未満の内容が混在しています。
注意して読む必要があります。
また、日本では小学6年生は卒業までに満12歳に到達します。
したがって、12歳未満と12歳以上が混在している学年です。
中学校1年生は12歳と13歳が混在していますが、全生徒が確実に12歳以上です。
成人に対して行政は、「翌年の3月末に対象年齢になる」という方針を貫いて来ました。
その方針に従えば、「12歳~16歳未満」は小学校6年生から中学3年生までとなります。
高校1年生は「学年満年齢で16歳以上」ですから、そもそもがすでに接種適応者ということになるのでしょうか。
■メリット、デメリット知った上で
新型コロナのワクチン接種は、大人の場合は重い肺炎や死亡のリスクを下げるというメリットが大きい。
一方、子どもは感染しても鼻水やせきといった軽い症状だったり、無症状だったりすることが大半だ。
そのため、「自分の命を守る」という直接のメリットを見いだしにくいのが現状だ。
しかし、驚くほど高い抗体がつく。
修学旅行や運動会などに制限がかからず学校生活が普通に送れる、学級閉鎖の頻度が大幅に減る、離れて住む祖父母や親類に会いやすくなるといった利点があります。
一方、副反応への心配も大きい。
一般に副反応は若い人ほど強いとされており、普段から体調不良を訴えているようなお子さんは、保護者とともにかかりつけの医師からよく説明を聞き、接種するか、しないか判断した方がいいと考えられる。
因果関係がなくても元々抱える症状がひどくなる可能性もある。
「接種しない判断」を差別するようなことがあってはならない。
コメント
「接種しない判断」を差別しないため、厚労省は学校での集団接種ではなく、個別接種で行っていく方針です。
参考・引用一部改変
朝日新聞・朝刊 2021.7.21