ワクチン証明渡航、相互利用の統一基準なく

ワクチン証明渡航、道半ば   相互利用の統一基準なく

日本や欧州連合EU)など一部の国・地域がワクチン証明制度の運用を始めている。

EUが1日から本格運用を始めた「デジタルCOVID証明書」は加盟27カ国に加え、スイスやノルウェーなどでも利用できる。

ただ相互利用に関する国際的な統一基準はなく、ワクチン接種後もすべての海外渡航がスム

ーズになるわけではない。

 

EUのワクチン証明は、域内などでは国境を越えてもQRコードを示すだけで自主隔離や検査

を免除される。

海外渡航の予定がなくても、国内で使うために取得する人は多い。

 

フランスは8月から飲食店や病院などの利用時に証明書を提示することを義務付けると決め

た。

ドイツはワクチン接種を陰性証明と同等と定めている。

 

イタリアやオーストリアなど一部のEU加盟国は日本の接種証明書を認めるが、EUの証明書

とは互換性はない。

ただ、EUは日本を含む感染の状況が一定水準以下の20カ国強を「清浄国」に認定。

実際に接種や自主隔離を求めるかどうかの判断は加盟国に任せており、ワクチン接種を完了

していなくても陰性の証明を示せば隔離なしで入国できる国が多い。

 

英国は他の欧州各国と人の往来が多いが、EUとの間でワクチン証明の相互利用を確立してい

ない。

英国は他国を「レッド」「アンバー(黄)」「グリーン」の3段階に分類する。

日本を含むアンバー国の場合、渡航前の陰性証明のほか入国後の2回の検査が必要だ。

ホテルや自宅などで10日間の自己隔離も求める。

 

一方、ワクチン証明を持っていても、日本国内への入国に使えるケースは多くない。

夏休みなどで海外から帰国する邦人の間では日本で普及する米ファイザー製ワクチンを接種

済みでも自主隔離などの行動制限を求められる現状に不満が出ている。

 

日本在住者が出張した際の帰国時や海外からのビジネス渡航者の入国時も同様で、ビジネス

の停滞につながりかねない。

 

主要7カ国(G7)は6月の保健相会合でワクチン証明書に関する連携の必要

が、国や地域ごとに承認したワクチンの種類が違うため調整は難航しそうだ。

まずは国や地域同士での個別の相互承認が先行する見通しだ。

 

中国はデジタル証明書の相互利用について、韓国と協議している。

すでに国内ではアプリの運用を始めており、ビジネス客などの往来を促進する狙いがある。

 

参考・引用一部改変

日経新聞・朝刊 2021.7.27