「隠れ陽性」市中で増加

「隠れ陽性」市中で増加 ワクチン2回接種後に感染も

新型コロナウイルスの感染に気づかず、社会生活を送る「隠れ陽性」が増えている。

東京都が繁華街などで行う無料検査で直近の数値が7月上旬の12倍まで上昇した。

行政検査が追いつかず、民間検査の活用も進んでいないことが背景にある。ワクチン接種完了後に感染する「ブレークスルー感染」もあり、無症状者の把握は不可欠。

経済の正常化に向け、検査体制の拡充とワクチン接種を両輪で進めることが求められる。

 

「検査を迅速に受けられないことにより、多数の感染者が潜在している可能性がある。検査体制のさらなる強化が必要である」。

都が9日に開いたモニタリング会議では専門家から検査の遅れによる市中感染の広がりに懸念が示された。

 

裏付けるデータがある。

都が繁華街や企業などで希望者を対象に無料で行う新型コロナのモニタリング検査だ。

9月5日までの1週間の陽性率は0.64%で、人口10万人あたりで640人になる。ほぼすべてが無症状者とみられる。

 

感染の疑いがある人や濃厚接触者を対象にした都の行政検査で直近1週間で陽性が明らかになったのは人口10万人あたりで62.5人(14日時点)だった。モニタリング検査で判明した陽性者はこの10倍で、感染に気づかないまま普段通りに生活する無症状者が多いことをうかがわせる。

 

「感染リスクのある場所を中心に検査をしている性格上、高い陽性率が出やすい」と指摘する声もある。

 

だが、モニタリング検査の陽性率は7月11日までの1週間は0.05%だった。その後2カ月で12倍になっており、感染力の強いデルタ型が広がった第5波で無症状の陽性者が増えている市中の状況を反映しているのは間違いない。

 

厚生労働省の調査では9月1~3日の新規感染者約4万2千人のうち2回接種後の感染者は2568人で全体の6%を占めた。

これは症状が出るなどした人に占める割合で、2回接種後に感染した無症状者も多い可能性がある。

 

無症状の陽性者が出歩けば感染が広がりかねない。

防ぐには都内では1週間に2万件前後にとどまる市中での検査数をより充実させる必要がある。

<コメント>

「無症状陽性者」も陽性が判明した時点で自宅療養を強制されることとなります。

その結果、家族内感染が増加する可能性が、かえって増える可能性が十分に考えられます。

隔離施設という受け皿が十分あるならまだしも、インフラが整わないままでの「隠れ陽性」の「あぶり出し」には、感染に「火に油」という危険と隣り合わせです。

そもそも、自分で「怪しい」と思っている人が、そもそもモニタリング検査を受けるだろうか、という疑問があります。

 

都のモニタリング会議は無作為の検査だけでなく、行政検査数の低さも指摘した。

都の1日の行政検査能力は緊急時で最大9万7千件。

1日の新規感染者数が5000人台に急増した8月の検査件数は、多い日でも最大能力の26%の2万5千件台にとどまった。

<コメント>

当地区でも、現時点で「濃厚接触者」の選定と検査は保健センターではなく開業医が行っている状態です。(「保健センターの崩壊」)

もっとも、「診療・検査医療機関」に指定されてさえいれば「行政検査」には変わりありません。

 

伸びなかった最大の理由はデルタ型の感染拡大に伴う保健所の業務逼迫だ。東京23区の保健所担当者は「発熱した人の検査や入院調整で手いっぱい。濃厚接触者の検査は追いついていなかった」と明かす。

 

本来なら、発症2日前から陽性者の行動をたどって接触状況を調べ、濃厚接触者を特定して行政検査を受けてもらう。

幅広く網をかけることで無症状者の感染を早期に発見し、感染拡大を防ぐのが目的だ。

 

感染者の急増で自宅療養者のケアや入院調整といった保健所業務が増大し、接触者らが放置される状況が増えた。

 

全国も同様の傾向にある。

全国の行政検査向けのPCR検査能力は1日あたり約23万件分あるが、8月の実績は多い日で16万6千件(全体の72%)にとどまった。

 

希望者が自主的に受ける自費検査のデータ活用も進んでいない。

旅行や出張に備え、民間検査機関でPCR検査などを受ける人は増えている。傘下に木下工務店を抱える木下グループが運営する全国15カ所の検査センターの8月下旬の予約率は90~100%に上った。

 

厚労省によると、自費検査のPCR検査能力は1日あたり10万件。

9月11日までの約1カ月間の実績は行政検査381万件に対し、自費検査223万件だった。

だが多くの自治体が自費検査のデータを感染状況の分析に織り込んでいない。検査の精度にばらつきがあり判定に誤りが生じることもあるとして、自治体が懸念しているためだ。

<コメント>

PCR検査」という言葉が一人歩きしてしまっていますが、「PCR検査」だけが国や自治体が認めている検査法ではありません。

よく濃厚接触者が発生した会社などから「PCRをどっかでやって貰ってこい」と言われて来院される方がみえます。

PCRじゃなきゃあかんぞ」という命令の言外には「抗原検査じゃあかんぞ」という意味が含まれているのです。

メディアも「PCR」という言葉を無神経に使うのはそろそろやめていただきたいのです。

最近では、「NEAR法」という13分で結果が出る検査法が開業医の間で普及しつつあります。

これは、地方行政はもちろん厚労省や検疫所でも容認されている検査法なのです。

LAMP法、TMA法、TRC法、Smart AMP法も同等で、「核酸増幅検査」と総称されます。

したがって「PCRなどの核酸増幅検査」という言葉が正確な表現なのです。

メディアも、国民をミスリードしないためにも報道には配慮していただきたいものです。

 

2月改正の感染症法で、都道府県には民間機関から陰性を含めた検査結果の報告が上がる仕組みになったが、都の担当者は「感染状況の分析には使っていない」と話す。

 

感染拡大の兆しをつかみ、的確に対策を打つには民間検査を含め多くのデータを集める必要がある。

補助金などをつけることで民間機関の検査の質を向上させ、希望者が無料で検査を受けられる体制を築くことが重要だ。

<コメント>

国側が民間検査を推奨するというのならば、各民間検査の検査法を公開し精度管理を徹底し信頼度のランク付けを国民に知らせる必要があります。

(陽性の場合よりも陰性の場合が問題であり、偽陰性の可能性が心配されます)

 

参考・引用一部改変

日経新聞・朝刊 2021.9.16