歯磨きで「がん」の発症リスク低減

歯磨きで発症リスク低減

歯ブラシや歯間ブラシなどを使って口の中を清潔にすることはがん予防や治療にも大いに役に立つ。
 
愛知県がんセンター研究所の調査によると、1日に2回以上歯を磨く人は、1回の人と比べて、口の中や食道のがんにかかるリスクが3割も低くなることが分かった。
逆に、全く磨かない人のリスクは、1回磨く人の1.8倍、2回の人の2.5倍にもなっていた。
 
同研究所では、歯の数とがんのリスクとの関係も調査している。
その結果、歯の数が減るほど、食道がんが増えることも分かった。
9~20本の人では、21本ある人に比べて、3%しか食道がんのリスクは増えないが、1~8本の人では1.9倍に、歯が1本もない人では2.4倍にまで上昇していた。
 
歯磨きをして、歯の数を保つことで、口の中のがんや食道がんを減らせる理由は十分には分かっていない。しかし、口腔内の細菌が関係している可能性がある。
 
プラーク(歯こう)は食べかすではなく、細菌の塊で、1ミリグラムのプラークには10億個もの細菌がひしめいている。
この細菌のなかには、発がん物質であるアセトアルデヒドを作るものがあるため、口の中を清潔にすることはがん予防の点でも大切だ。
 
がんの治療でも、口腔内の清潔はプラスになる。
例えば、抗がん剤の影響で免疫力が低下すると、虫歯や歯周病も悪化するため、治療の前に十分な口腔ケアを行うことが必要となる。
 
虫歯を放置したまま放射線治療を行うと、顎の骨に炎症が起こるなどの副作用が出やすくなる。
照射後の抜歯は難しいことも多く、治療前に虫歯を抜いておくことが必要となる。
治療開始が遅れるし、治療後の摂食にも影響が出るから、最近では、事前に歯科を受診してもらうのが常識になっている。
 
歯の数が多いほど、認知症や転倒の機会が少ないというデータもある。
厚生労働省日本歯科医師会は健康長寿のための「8020(ハチマルニイマル)運動」を進めている。
「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」というものだ。

参考・引用
日経新聞・夕刊 2016.11.10