ES細胞から立体的な網膜 理研や京大、作製成功

理化学研究所京都大学大阪大学は、様々な体の組織になる胚性幹細胞(ES細胞)から立体的な網膜の組織を作りだすことに成功した。
これまでは目の細胞の一種は作れたが、立体構造にはできなかった。視力が低下する網膜色素変性症の再生医療に道を開く成果。
7日付の英科学誌「ネイチャー」に掲載される。

網膜は視細胞など6種類の細胞が層状に重なった立体構造をしている。
再生医療では、複雑な組織を再現することが大きな課題となっている。

理研笹井芳樹グループディレクターや永楽元次・副ユニットリーダーらは、マウスのES細胞から網膜組織に成長させる培養条件を突き止めた。
細胞を固める物質などを入れて1週間ほど培養すると、60%以上が網膜になる前の「前駆細胞」という細胞になった。
網膜に成長する途中段階で現れる杯のような構造ができ、これを切り取って培養すると約2週間で網膜と同じ多層構造になった。

笹井グループディレクターは「ヒトのES細胞でも同様の立体状組織が作れる」と話す。
研究グループは今後、ヒトのES細胞でも動物実験し、6〜7年で培養技術を確立。

網膜色素変性症を治療する臨床研究を始める計画だ。

出典 日経新聞 Web刊 2011.4.7
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