鼻細胞移植し糖尿病治療

鼻細胞移植し糖尿病治療 産総研など、ラットで実験
産業技術総合研究所は米ソーク研究所と共同で、神経の元になる神経幹細胞を使って糖尿病を治療する手法を開発した。
神経幹細胞がインスリンをつくりやすい状態にしてラットの膵臓に移植したところ、血糖値が低下した。成果は欧州の専門誌EMBOモレキュラー・メディスン(電子版)に7日掲載された。

研究グループは、脳の神経系でも膵臓と同じインスリンをつくる遺伝子が働くことを見つけ、これを活発にする仕組みを解明。
遺伝子の働きを促進する薬剤を加えた液中で、成体の神経幹細胞を培養してラットの膵臓に移植。
移植した細胞でインスリンが効率よくつくられることを確認した。

日本人に多い2型糖尿病のラットでは、移植後7週間で血糖値がほぼ正常に下がった。1型糖尿病ラットでも血糖値が大幅に改善した。

神経幹細胞は脳で記憶をつかさどる海馬や、鼻の奥にある嗅覚の神経組織から採取。
ヒトの治療に応用する場合は鼻の奥の粘膜から採取できるという。
今後さらに動物実験を続け、効果的な薬剤などの研究を進める。

糖尿病の治療では他人の膵臓細胞を移植する方法があるが、提供者不足などの問題がある。新手法は自身の細胞を移植するので、その心配がない。
また遺伝子を組み込まないので、がん化などのリスクも低いという。

出典 日経新聞・Web刊 2011.10.7
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