糖尿病の薬(4)飲み薬と注射併用し効果

血糖値がなかなか下がらない場合、飲み薬とインスリン注射を併用する治療法もある。

東京都府中市のTさん(81)は30年前、仕事中にめまいを起こして医療機関を受診した。
医師から血糖値が高いと指摘されたが、「痛くもかゆくもないのでしばらく放置していた」と振り返る。

しかし、10年前から心筋梗塞脳梗塞を相次ぎ発症。
入退院を繰り返し、心臓の手術も受けた。

「入院して先生から心筋梗塞脳梗塞も糖尿病が原因だと告げられ、本当に怖い病気だと実感しました」

現在は自宅近くのFクリニックで糖尿病の治療を続けている。

当初、膵臓から出て、血糖値を下げるホルモン「インスリン」の分泌を促す「スルホニル尿素(SU)薬」などを服用した。
だが、治療効果はあまりなく、むしろ過去1~2か月の平均的な血糖値を反映するヘモグロビンA1cが7%(基準値4・3~5・8%)から9・5%にまで上昇した。

そこで2008年、同クリニック院長のI先生から、飲み薬に加え、インスリン注射を併用する治療法を提案された。

インスリン注射には毎食前に打つとすぐに血糖値を下げる「速効型」や、ゆっくりと下げて効果が約24時間持続する「持効型」などがある。
市川さんが勧めたのは、後者のタイプだ。

「1日1回の注射で済むなら続けられると思った」とTさん。
毎朝、腹部にインスリン注射をするのが日課となった。
すると翌月からヘモグロビンA1cが下がり、今は6・5%程度で安定している。

I先生さんは「SU薬は血糖値を下げる効果が強い。だが、それでも効果が得られない場合、持効型のインスリン注射を併用する方法は、次の治療の選択肢の一つになる」と話す。

この治療法は、持効型のインスリン注射が登場したのをきっかけに普及し始めた。注射は1日1回で済むため、患者の負担は軽い。
注射を嫌う患者にも説得しやすく、糖尿病が専門ではない医療機関にも広がっている。

ただ、食事ごとにインスリン注射を打つ必要がある患者にも、注射が1回で済むこの治療が行われているケースが少なくないと指摘する専門医もいる。

順天堂大病院糖尿病・内分泌内科教授のO先生は「飲み薬と持効型のインスリン注射を6か月程度続けて血糖値が十分に下がらなければ、すぐ効くタイプの注射を追加する必要がある」と説明する。

I先生も「この治療法は完璧ではないが、新たにインスリン注射が必要な患者に対し、注射への抵抗感を少なくするステップとして有効だ」と話す。

出典 YOMIURI ONLINE yomi.Dr. 2011.10.6
版権 読売新聞社


'''<私的コメント>'''
「注射が1回で済む治療」としてランタス、レベミル(いずれも商品名)があります。

ランタスオプチクリック
http://www.qlife.jp/meds/rx14258.html

ランタス注ソロスター/アピドラ注ソロスターをお使いの方
http://www.dm-town.com/tounyou/aboutuse/manual/index.html

インスリンランタス」に発がん性の疑い?
http://allabout.co.jp/gm/gc/302339/
http://d.hatena.ne.jp/bonbokorin/20090702/p1
(ちょっとこわい話です)

ランタスvsレベミル
http://reboundex.blog100.fc2.com/blog-entry-60.html

先行発売されたランタスに対してレベミルは
1)空腹時血糖の個体内変動幅が少ないこと、
(2)経口糖尿病治療薬と併用した場合に体重増加率が低いこと
――が報告されています。
また、pHが中性に調節されていることから注射時の刺激が少ないとされます。
さらにデバイスに関しては、従来から他のインスリン製剤で使用されているフレックスペンが使用可能なので、信頼性が高く、以前からインスリン製剤を使用している患者にとっては違和感が少ないと考えられます。


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