糖尿病新薬、使い方に注意 過度の低血糖や高血糖…死亡例も

この度の東北地方太平洋沖地震により被災されました方々に、心よりお見舞い申し上げます。
犠牲になられた方々、そしてご遺族の皆様に対し、深くお悔やみを申し上げます。
また、福島第一原発事案(事故)で避難中の方々、そして計画停電中の首都圏の方々にお見舞い申し上げます。
また、被災者支援や原発復旧作業などの災害対策に全力を尽くしてみえる皆様に敬意を表します。

以下は、ビクトーザ(一般名リラグルチド)という糖尿病新薬についての新聞記事です。


糖尿病の新しいタイプの治療薬が相次いで発売されている。
ところが予想外の低血糖高血糖を起こす人が続き、2010年10月までに2人亡くなった。
うまく使えば患者の生活の質が上がるだけに、専門家らは緊急情報などを出して適切な使い方を呼びかけている。
どんな点に注意すればいいのかを探った。

●1日1回使用で効果
東京都内に住む並木満雄さん(80)は約40年前に糖尿病と診断され、10年ほど前からインスリン注射を打つようになった。
2010年7月、雑誌で糖尿病の新薬が出たのを知った。
インスリンの分泌を促すビクトーザ(一般名リラグルチド)という注射薬だ。

以前から、新薬が出たら試したいと思っていた。「この薬を使わせて下さい」。
東京都済生会中央病院で、主治医の渥美義仁糖尿病臨床研究センター長に頼んだ。

渥美さんは「低血糖に注意を。便秘、下痢が起こるかもしれない」と説明し、当面は1日4回、自分で血糖値を測定するように指導した。

ビクトーザは自分で注射する。並木さんは1日1回0.3ミリグラムの注射から始め少しずつ量を増やしていった。

以前は1日4回、食事や就寝の前にインスリンを注射しなければならなかった。
インスリンは血糖が筋肉に取り込まれるのを支える働きをするホルモン。糖尿病で膵臓からの分泌能力が下がると、注射で補わなければならない。

並木さんはインスリンを打ったのを忘れて直後にまた打ち、低血糖を起こしたことも2回ある。
インスリンはもの忘れが多くなった年寄りには本当にストレスだった」と並木さんは言う。

妻の芳子さん(77)は並木さんがインスリンを打ったら間を置かずに食事を出せるよう支度するタイミングにも気を使った。
毎食、ピリピリしながら準備していたという。

ビクトーザは食事時間と関係なく1日1回で済む。
「薬を変えて、2人ともとっても明るくなりました」と芳子さんは笑う。

ビクトーザはインクレチン関連薬とも呼ばれ新しいタイプの治療薬だ。
高血糖時に働くので、従来のように使用のタイミングや回数に気を使わなくても済むのが利点だ。
2009年12月には別の関連薬でこちらも1日1回で済むジャヌビアとグラクティブ(いずれも飲み薬で一般名シタグリプチン)も発売。
今後も新薬が相次いで発売される見込みだ。

インスリン検査必要
しかし、並木さんのように新薬をうまく使い始められた人ばかりではない。

ジャヌビアとグラクティブでは、当初は意識障害を伴う重篤低血糖に陥った患者の報告が相次ぎ、厚生労働省は2010年4月、製薬企業に「使用上の注意」の改定を指導した。

さらにビクトーザで6月の発売から使用した20人が高血糖に陥り、うち4人がインスリンの欠乏により意識障害などを起こす「糖尿病性ケトアシドーシス」になり、60代の男性2人が亡くなった。
このため、同省は10月に、製薬企業に対し、ビクトーザの「使用上の注意」を改定するよう2度目の指導をした。

なぜ低血糖高血糖が起こったのか。

ジャヌビアとグラクティブで低血糖を起こした患者の9割は65歳以上だった。
従来の血糖を下げる薬のスルホニルウレア剤(SU薬)を併用している人も多かった。

関連薬は本来、血糖の低い時には働かない。
このため低血糖を起こしにくいとされていた。これに対してSU薬は血糖が低くても作用する。

日本糖尿病学会理事長の門脇孝東京大教授(糖尿病・代謝内科)は「重篤低血糖が起きたのはSU薬の量が多かったり、高齢などで腎機能が不十分で薬の体外への排出が遅くなったりという原因が考えられる」と分析する。

専門家らの民間組織「インクレチンの適正使用に関する委員会」は、低血糖を予防するため、65歳以上の高齢者や軽度の腎機能の低下がある人が関連薬とSU薬を併用する場合、SU薬の量を減らすよう推奨している。

ビクトーザで重い高血糖を起こした患者20人のうち17人はインスリン治療をやめていた。
ビクトーザは他の関連薬より効果が大きいが、あくまでインスリンの分泌を促す薬で代替にはならない。

インスリンがほとんど分泌していない人がインスリン注射をやめれば、ビクトーザを注射しても高血糖に陥り、危険だ」と、稲垣暢也京都大教授(糖尿病・栄養内科)はいう。

インクレチン関連薬は、インスリンを分泌する膵臓の細胞が免疫異常などで破壊される1型糖尿病には承認されていない。
生活習慣などが原因でインスリンの分泌が衰える2型糖尿病患者のうち、インスリンがある程度、分泌している人が対象だ。
インスリンの分泌状況を血液検査で測定し使えるかどうか判断する。

「ただし、腎機能が低下していると数値が高く出るなどわからない場合もあり、より専門的な検査が必要なこともある」と稲垣さんは言う。

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<インクレチン関連薬> 
インクレチンは小腸など消化管から出るホルモンでインスリンの分泌を促す働きがある。
関連薬は、インクレチンの分泌を促したり、インクレチンが体内で分解されるのを防ぐ働きを促したりする。
従来の治療薬と違い、原則として血糖が高い時に作用し、低い時は作用しない。
使用上の注意点の詳細は、日本糖尿病協会の「医療従事者向け情報」に載っている。


出典 朝日新聞・朝刊 2010.11.11
版権 朝日新聞社


<番外編> ちょっといい話
タイの発電所、日本に丸ごと貸し出しへ
日本に貸し出されるのは、巨大な煙突、タービン、発電機といった発電設備一式、これを2セットです。発電所ほぼまるごと、日本に移設されます。

東京電力に貸し出されるのは12万2000キロワットのガスタービン発電設備2機などで、およそ24万世帯分の電力を賄うことができます。
この発電設備は日本製で、95年から稼働していますが、現在はピーク時を除いて使われていないため、電力不足に悩む日本に無償で貸し出すことになりました。

「日本はこの困難に対し決して孤独ではありません。何でもサポートします」(タイ電力公社の社員)

発電所は分解して船で運び、東京近郊に移設されるということで、東京電力では今年8月の運用開始を目指しています。
発電機だけのレンタルはありますが、発電所が丸ごと貸し出されるケースは、世界でも極めて珍しいということです。
TBS系(JNN) 3月29日(火)18時58分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20110329-00000042-jnn-int

私的コメント
「情けは人の為ならず」
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