インフル増殖たんぱく質:ヒト細胞で特定 

インフル増殖たんぱく質:ヒト細胞で特定 全型対応に道
インフルエンザウイルスが増殖する際に重要な役割を果たすたんぱく質を、東京大医科学研究所の河岡義裕教授(ウイルス学)のチームがヒトの細胞で発見した。
ウイルスの型によらず有効で薬剤耐性ができにくい抗ウイルス薬の開発につながる可能性があるという。
5日付の米国科学アカデミー紀要に発表した。

インフルエンザウイルスは自身では増殖できないため、宿主(ヒトなど)の細胞に侵入して増殖し、他の細胞に広がる。

河岡教授と同研究所の大学院生、五来武郎さんらは、感染したヒトの細胞を詳しく調べ、細胞表面にある「F1ベータ」と呼ばれるたんぱく質に着目。
この量を減らすと、細胞から出てくるウイルスの量が減った。
F1ベータを含むたんぱく質の複合体が、増殖したウイルスを細胞外に放出する手助けをしていると見ている。
B型や、09年に大流行した新型(H1N1)など、どの型のウイルスでもF1ベータが増殖に重要な役割を担うことも確かめた。

こうしたたんぱく質の存在は、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)などでは特定されているが、インフルエンザウイルスで特定したのは世界で初めて。

タミフル」などの治療薬は、ウイルス表面のたんぱく質の働きを抑えるが、ウイルスが変異すると効きにくくなることが問題だった。
河岡教授は「ヒトの細胞にあるたんぱく質を標的にすることで、より有効な治療薬の開発が期待できる」と話す。【久野華代】

出典  毎日新聞 2012.3.6
版権  毎日新聞社

http://mainichi.jp/select/science/news/20120306k0000e040190000c.html