虫歯菌感染で大腸炎リスク4倍 阪大など解明

虫歯の原因となる「ミュータンス菌」の一種に感染すると、腹痛や腸内出血などを繰り返す難病の潰瘍性大腸炎となるリスクが4倍以上になることを、大阪大や横浜市立大、浜松医科大などのチームが突き止め、26日付の英科学誌サイエンティフィック・リポーツ電子版に発表した。

潰瘍性大腸炎の原因は、体内の免疫異常などとされるが、はっきりしていない。
阪大の和田孝一郎准教授は「原因の一つが分かったので治療法の開発につながるかもしれない。一部の患者では口を清潔に保てば症状が改善する可能性もある」としている。

チームは「コラーゲン結合タンパク質」を持つなどする特定のタイプのミュータンス菌を、薬剤で軽度の腸炎を発症させたマウスに注射した。
すると腸炎が悪化し、注射しない場合の生存率が約7割なのに対し、注射すると約2割に減った。

注射したマウスを調べると、肝臓に菌が取り込まれ炎症に関連する物質が作られていた。
免疫異常の引き金とみられる。

潰瘍性大腸炎患者98人の調査では56人がミュータンス菌に感染。
うち約14%が特定タイプで、発症リスクは健康な人の4.55倍になった。

この菌をマウスの口から与えても影響しないが、比較的少量でも血中に入ると腸炎が悪化し、生存率が下がった。
歯磨きでできる小さな傷にも注意が必要という。〔共同〕

出典 日経新聞・Web刊 2012.3.26
版権 日経新聞


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虫歯菌、脳出血を助長 阪大教授ら発見、発症リスク4〜5倍
大阪大の大嶋隆教授や和田孝一郎准教授、浜松医科大の梅村和夫教授らは、虫歯菌に脳出血を促すタイプが存在することを突き止めた。
保菌者の脳出血の発症リスクは、そうでない人の4〜5倍という。
論文が英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(電子版)に28日掲載された。

脳出血患者の血液から虫歯菌といわれる「う蝕(しょく)病原菌」の特殊な種類を発見した。
血管の内壁が傷つくとそこに結合するたんぱく質を作る性質があり、傷を治りにくくする。
日本人の約8%が保有する菌だが、脳出血の患者を調べると約3割がこの菌を持っていた。
患者から採取した菌をマウスに投与すると脳に出血がみられた。
脳出血したマウスに投与すると脳の出血面積は5〜6倍に広がった。

口の中には主に虫歯菌と歯周病菌が存在する。
これまで歯周病菌が心臓病などに悪影響することは知られていたが、虫歯菌の報告はほとんどなかったという。
研究チームは企業と協力し、簡易検査キットを開発中。

出典 日経新聞・Web刊 2011.9.28
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