コロナ検査キット在庫急減

コロナ検査キット在庫急減 診断・治療、遅れる恐れ

新型コロナウイルスの感染急拡大により感染の有無を調べる抗原検査キットの在庫が急減し、足元では自治体や医療機関での検査が停滞する事態が起きている。

政府はコロナの変異型「オミクロン型」に対し、幅広い検査で感染拡大を抑制する方針だった。

肝心のキットが足りず、診断や治療の遅れのほか、感染拡大の抑制と社会経済活動の両立にも支障を来しかねない。

 

政府関係者によると、19日ごろに計600万回分あるとしていたメーカーの抗原キットの在庫が数日でほぼ半減した可能性がある。

「一気に減ってぎりぎりの状態だ。24日以降特に厳しくなる」と明かす。

 

政府は第6波に向けた新たな対策として、第5波のピークより3割多い3.7万人が入院できるようにするほか、病床の使用率を高めるなど病床の確保を軸に、医療体制の改善を目指していた。

感染拡大時には都道府県の判断で無症状者にも無料でPCR検査を提供できるようにし、ワクチンの3回目接種の職域接種を容認することなども掲げた。

 

21年末に感染力の高いオミクロン型の市中感染を確認し、政府は無症状者を含め幅広く検査する方針にかじを切った。

主力は30分程度で結果がわかる抗原キットだった。

 

だが感染が想定以上に急拡大し保健所の業務が逼迫。

感染者の追跡調査が追いつかなくなると、職場や学校で感染者の周囲にいた人などが自治体の無料検査所や医療機関にこれまで以上に殺到し、すぐにキット不足を招く事態となった。

 

21年末から希望者全員に無料検査を実施している東京都では、検査会場の一部店舗などでキットが不足している。

品切れのため、都はホームページで「検査を受けられない場合がある」と事前確認を呼びかけている。

 

奈良県医師会は20日の記者会見で「今後、発熱外来などの対応ができなくなる可能性がある」と危機感を示した。

大阪府の担当者は「需要が急増し、事業者が検査キットを取り合っている状態だ」と指摘する。

 

抗原キットの不足は医療機関などでは外来患者へのコロナ感染の診断や治療の遅れにつながりかねない。

行政検査では抗原検査とPCR検査をしている。

PCRの検査件数は1日約20万回と、すでに第5波のピーク時なみの水準だ。今後、PCRのみの「一本足打法」になれば、こちらも厳しくなる懸念がある。

英オックスフォード大学の研究者らでつくる「アワー・ワールド・イン・データ」によると諸外国に比べ日本のコロナ検査の規模は小さい。

集計手法が異なり単純に比べられないが1日の人口1000人あたりの件数は1月中旬時点で英国は約20件、米国は約6件、韓国は約3件なのに対し、日本は約1件だ。

 

政府はメーカーや医薬品卸に対し、行政検査を手掛ける自治体と医療機関への出荷を優先するよう指示。

海外メーカーにも供給増を働きかけ、2月には輸入量が段階的に増える見通しという。

 

アボットなど大手には他国からの発注も相次いでいる。

政府関係者によれば米国の無償配布に加えシンガポールなども大量に発注しているといい、国際的な争奪戦の様相を呈している。

 

米バイデン政権は計10億個のキットを国民に配る方針を打ち出したほか、フランスでは20年にすでに薬局などで無料で検査できる対応をしていた。

日本の準備不足は明らかだ。

 

政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長ら専門家有志は、重症化するリスクの低い若年層には「必ずしも医療機関を受診せず自宅療養を可能とすることもあり得る」との見解を示した。

コメント;

相も変わらず分科会は無為無策です。

こういった事態に陥る前に、コロナ検査キットが不足することを、事前に政府に進言するのが彼らの役割です。

「必ずしも医療機関を受診せず自宅療養を可能とすることもあり得る」・・・まずは確定診断が先ではないですか。寝言は寝てから言って欲しいものです。

 

抗原キットは一般の人が自ら使うことができ、仕事や学校に行く前に陰性を確認するなど感染抑制と社会経済活動を両立させるための利用も多い。

検査体制の拡充に加え、より厳しい局面を想定したコロナ対策の立案が急務だ。

 

参考・引用一部改変

日経新聞・朝刊 2022.1.24

 

コメント;

御多分に洩れず、当院でも2~3日前から行政検査としての米アボット社製の「ID NOW」の検査キットが入手出来ません。

行政検査で陽性であった方が保健センターの指示下に入るという方程式が完全に崩れました。

「分科会」は検査キットが不足する事態を想定していなかったのでしょうか。

政府もワクチン確保に目いっぱいで検査キットの不足まで考えつかなかったフシがあります。

抗原検査キットによるスクリーニングを奨励する施策を始めた結果が、すぐにキットの供給不足という形で現れました。

まさにマッチポンプです。

結果的には「火に油」の愚策だったのです。

施政者や官僚は、現場を知って初めて正しい政策が立案出来るのです。

太平洋戦争中の、戦地の状況を把握していない大本営となんら変わらないのが実に情けないです。

数日前、当院で検査キットが枯渇している状況のもと、所属医師会から「検査をさらに拡充するように医師会員の協力を」というFAXが届きました。

武器がなければ最前線の兵士は戦えません。

 

当院では、2022.1.21時点で「無症状の濃厚接触者」への検査はお断りすることにしました。

まさしく、このトリアージは断腸の思いです。

 

追記

検査キットを製造しているメーカーは不良在庫をかかえることを心配しています。

オミクロン株の終息とともに新型コロナ流行の終焉を迎える可能性さえ囁かれている中、増産を躊躇するのは当絶です。

政府のミスで、医療機関や薬局のでの検査キットの「買い付け騒動」が起こったわけですから、(飲食店への補填も大事かも知れませんが)増産による余剰分を買い取るぐらいの政策を打ち出せないものでしょうか。