夏に増える尿路結石

イメージ 1

イメージ 2

夏に増える尿路結石 30~50代男性ご注意 食習慣見直し再発防止


突然、激痛に襲われる尿路結石は、汗をかき尿が濃くなる夏に増える。食生活の欧米化などが影響しているといわれ、結石ができる場所や大きさなどに応じて薬や衝撃波、内視鏡など様々な治療法がある。再発しやすいため、食生活の改善などが重要だ。


尿は腎臓で作られ、尿管を通って膀胱(ぼうこう)にたまり、最後は尿道から体外に排出される。この尿路と呼ぶルートの途中で詰まるのが尿路結石だ。尿の流れが滞ると激しい痛みを引き起こす。

 結石のできる場所で名前が付いており、腎臓なら腎臓結石と呼ぶ。結石が尿管に降りてくれば尿管結石となる。大半は腎臓で作られるが、膀胱でできるケースもある。

 石といっても成分はシュウ酸カルシウムやリン酸カルシウム、尿酸などだ。尿中の物質に、シュウ酸やリン酸などが加わりながら成長する。


日本人の1割患う

 尿路結石は日本人の約1割が一生のうちに患うといわれ、30~50代の男性に多い。詳しい原因は分かっていないが、食生活の欧米化などが影響していると専門家はみている。帝京大学医学部の堀江重郎主任教授は「汗をかく夏場には尿が濃くなり、結石が成長しやすくなる」と指摘する。

 尿路結石は下腹部や脇腹などに激しい痛みが表れ、吐き気や冷や汗を伴うケースが多い。周囲の粘膜を傷付け、血尿が出ることも。ただ、結石が小さい場合は、尿と一緒に自然に排出されることもある。また、常に激痛がするとは限らず、鈍痛の場合もある。これを放置すれば腎臓に尿がたまって腫れ、腎機能の低下を招くので要注意だ。


治療法は結石の場所と大きさによって様々ある。まずコンピューター断層撮影装置(CT)などで大きさと位置を特定する。堀江教授は「結石が5ミリメートル以下なら尿路の周りの平滑筋が緩む薬を服用し、結石が排出されるのを待つのが一般的だ」と話す。最近は前立腺肥大症の治療薬を使う手法が欧米で普及し、国内でも臨床試験(治験)が進む。

 結石が5ミリメートルを超える場合は手術で取り除く。泌尿器科で普及しているのは、体外から結石に焦点を合わせて衝撃波を当てて砕く「ESWL」という方法だ。メスを使わず、麻酔・入院も不要。ただし、衝撃波が結石に当たらず腎臓などの毛細血管を傷付け、出血する恐れもある。

 最近増えているのが尿路に内視鏡を入れ、レーザーで結石を砕く方法だ。非常に細い管を尿道から入れ、先端に取り付けたカメラで結石を観察しながらレーザーを当てる。衝撃波に比べ、結石を確実に砕ける。砕いた後は専用の器具でかけらを取り出す。

 この治療では麻酔や2~3泊程度の入院が必要で、内視鏡などを挿入する際に尿路が傷付く恐れもゼロではない。ただ、国際医療福祉大学三田病院の荒川孝・尿路結石破砕治療センター長は「衝撃波治療を1回受けて結石が半分も砕けないようなら、内視鏡治療に切り替えた方がいい」と話す。衝撃波で腎機能が低下する危険性が高まるからだ。

 内視鏡治療を取り入れる医療機関は増えているが、衝撃波だけを扱う泌尿器科もまだ多いという。「治療法を切り替えやすいように、両方の治療ができる医療機関にかかるのが理想だ」(荒川センター長)。また、発見が遅れて結石が3~4センチメートルまで成長してしまったら、腎臓に穴を開けて除去する手術も選択肢に入る。どの治療法を選ぶかは医師と十分相談しよう。



紅茶には低脂肪乳
尿路結石はいったん治療しても再発しやすく、患者の3割にも達する。そこで重要になってくるのが食生活の工夫だ。「シュウ酸や脂肪が多い食事をとると、尿中のシュウ酸濃度が上がり結石が出来やすくなる」(荒川センター長)

 肉ばかりの偏った食事を避けるほか、ホウレンソウやタケノコなどシュウ酸が多い食べ物の取り過ぎはやめよう。水分を補給するのはおすすめだが、紅茶やコーヒーにもシュウ酸が含まれるため、なるべく低脂肪のミルクを組み合わせて飲むようにする。こうすれば、腸内でシュウ酸とカルシウムが結合し大便として排出される。

 最近では20代男性や女性でも発症例が増えている。偏った食事メニューや夜遅く食べることなどが影響しているようだ。こうした食習慣は尿路結石だけでなく、糖尿病や高脂血症などにもつながる。健康診断で中性脂肪や尿酸値が高かった人は、尿路結石のリスクにも直面していると考え、生活スタイルを見直すきっかけにしたい。

(草塩拓郎)

日本経済新聞夕刊2012年8月10日付]