川崎病

川崎病 原因は不明、増える患者

主に乳幼児がかかり、心臓に後遺症が残ることがある川崎病は、小児科医の川崎富作氏(91)が専門誌に報告してから、今年で50年になる。
原因は今もわかっていない。
医師や研究者たちは、原因究明や治療法の確立をめざしている。

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本川崎病学会の「診断の手引き」によると、特徴的な症状は
(1)5日以上続く発熱
(2)両目の充血
(3)唇の紅潮やいちご舌
(4)様々な形の発疹
(5)手足の硬い腫れや紅斑
(6)首のリンパ節の腫れ。
このうち五つ以上の症状が出ると川崎病と診断される。
腕のBCG接種痕が赤く腫れたり、治りかけの頃に指の皮がむけたりするのも特徴だ。
 
川崎病になると、全身の血管に炎症が起きる。
とくに、心臓の筋肉に血液を送る冠動脈は炎症が続くと、こぶ(瘤)ができることがある。
小さなこぶは元に戻るが、こぶが直径8ミリ以上になると血栓ができやすく、冠動脈が詰まったり細くなったりして、心筋梗塞の原因になる。
 
後遺症を残さないためにできるだけ早く治療を始める必要がある。
二つか三つでも症状が出たら、心臓の検査ができる病院を受診する必要がある。
 
現在、患者の約9割が受けている治療法が、血液製剤である免疫グロブリンの短期間の大量投与だ。
1980年代後半から、心臓の後遺症が出にくいことが確かめられ、広く普及した。
 
治療法の進歩で、心臓に後遺症が残る人の割合は年々減る傾向にあり、2013~14年は2.6%だった。ただ、免疫グロブリンが効かない人も約2割いる。
近年、ステロイド剤を併用すると効果が上がるとの報告があり、試みられている。
 

川崎病」と言っても、土地名を冠した公害病ではない。
1967年、旧日赤中央病院(東京都)に勤める医師の川崎さんが、原因不明の50症例を初めて発表したのが由来だ。
 
70年に旧厚生省の川崎病研究班が発足し、全国的な疫学調査が始まった。
82年、原因不明の大流行が起きたことから、日本心臓財団川崎病原因究明対策委員会が設置された。
臨床や疫学、免疫など幅広い分野の専門家が集まって、ウイルスや細菌などの原因説が唱えられたが、解明には至らず、92年に解散した。

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少子化が進んでいるのに、患者は年々増える傾向にある。
全国調査によると、直近の2014年は1万5979人と、過去最多だった。
 
4歳以下が約87%を占め、患者の割合は0~4歳の人口10万人あたり308人に上り、これも過去最多だった。
病気の原因がわからないため、増加の原因もわからない。
 
これまで川崎病に関する論文は国内外で約1万1600本発表されてきた。
女子に比べて男子の方が発症しやすい、アジア系人種で特に日本人に多い・・・。
そんな傾向を踏まえ、2010年には専門家らが共同で遺伝研究をする日本川崎病遺伝コンソーシアムができ。
患者の血液を集め、川崎病にかかりやすい遺伝子がないかなどを探っている。
15年には福岡市立こども病院が川崎病センターを設立し、専門的な診療や原因の究明に取り組んでいる。
 
川崎さんは、卒寿を過ぎた今も、都内のNPO法人本川崎病研究センターで週に1度、患者家族の相談に乗っている。

 
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参考
朝日新聞・朝刊 2017.1.7