骨粗鬆症 早期治療へ診断見直し

繰り返し骨折 防げ  骨粗鬆症 早期治療へ診断見直し

国内に患者が1千万人以上いるとみられる骨粗鬆症
全身の骨がもろくなり、骨折を繰り返す心配がある。
早く骨粗鬆症の治療を始めて骨折を防ごうと、関係学会は診断の基準を見直した。
最近は骨折を抑える効果が高く、患者の負担が小さい新薬も登場している。
 
■'背3センチ縮んだら受診
関節痛に悩んでいた奈良県内の50代の女性は昨秋、おなかに鈍い痛みを感じて内科を受診した。
だが、原因は不明。
10月、某大学病院を紹介され、エックス線撮影をすると、背骨が圧迫骨折していた。
身長が約3センチ縮んでいた。
 
転んでもいないのに背骨が折れていたため、同大教授(整形外科・リウマチ科)は骨粗鬆症と診断した。
背骨の骨折は、じわじわ圧力がかかって骨がつぶれ、身長が縮むことがある。
女性のおなかの痛みは、背骨を骨折したことで、骨が神経に触れたことが原因と疑われた。
コルセットを着けて、また骨折しないよう薬を飲み始めた。
 
骨粗鬆症で骨がもろくなって骨折すると、新たに骨折するリスクは一般の人の2倍程度になるという報告がある。
背骨を骨折した人が新たに背骨を折るリスクは3~4倍、太ももの付け根の骨折は3~5倍という。
 
骨粗鬆症は速やかに診断し、早く治療を始めることで骨折の繰り返しを防げる。
背骨の骨折は痛みがないこともあり、身長が3センチ縮んだら受診したい。
 
太ももの付け根の骨を折ると、寝たきりになるなど身体能力が下がり、海外では1年以内に2割が亡くなるとの報告もある。
 
日本骨代謝学会などは昨年度、骨粗鬆症の早期治療につなげられるよう、診断基準を見直した。
つまずいて転ぶなど、軽い力で背骨や太ももの付け根を骨折した場合、骨密度に関係なく骨粗鬆症と診断できることにした。
従来は、骨折に加えて骨密度が若年成人の80%未満などの条件を満たす必要があった。
 
新薬、半年に1度注射
近年、骨粗鬆症の治療薬の選択肢も広がっている。
いまの主力は、骨を吸収してしまう「破骨細胞」にくっついて、吸収を抑える薬「ビスフォスフォネート」だ。
この中でも「リセドロン酸」という薬剤は、背骨のほか、太もも、手首、腕の付け根など様々な骨折に効果がある。
これまで1日1回か週1回、飲む必要があったが、月1回だけ飲めばいいタイプが2月に発売された。
 
2013年6月には、より効果が期待できる新薬「プラリア」が発売された。
破骨細胞ができるのに必要な特定の物質にくっつき、骨の吸収を抑える働きがある。
しかも、半年に1度、医療機関で皮下注射すればいい。
 
従来の薬と違い、成分が血中を巡って全身に広がる。
ビスフォスフォネートより骨の吸収を強く抑え、特に太ももの付け根の骨折を防ぐ効果が期待できるという。
 
国内での臨床試験(治験)によると、背骨の骨折は、偽薬を使った人に比べて、60~70%抑えることができた。
欧米では、太ももの付け根の骨折を40~60%抑えるとの結果が出ているという。
 
重い副作用は報告されていないが、血中のカルシウム濃度が下がる低カルシウム血症がまれにみられ、ビタミンDとカルシウムの補充が必要になる。
半年に1度なので、複数の医療機関にかかる人は、注射の重複打ちに注意が必要だ。
 
飲み薬は、飲み忘れる人もいる。
半年に1度なら通院を忘れなければ治療を継続できる。
効果や副作用に注意を払いながら、生活環境にあわせた薬の選択が可能になる。

参考・引用一部改変
朝日新聞・朝刊 2013.7.9


参考
プラリア皮下注60mgシリンジ
http://www.rad-ar.or.jp/siori/kekka.cgi?n=44050

新規骨粗鬆症治療剤「プラリアⓇ皮下注60mgシリンジ」新発売のお知らせ
https://www.daiichisankyo.co.jp/news/detail/005983.html
ヒト型抗RANKL*モノクローナル抗体製剤で、骨吸収に必須のメディエーターであるRANKLを特異的に阻害し、6ヵ月に1回、皮下投与する新規骨粗鬆症治療剤です。国内外の臨床試験において、骨粗鬆症患者における骨折抑制効果が示されております。