お通じ改善、生活習慣から

お通じ改善、生活習慣から 食事・水分の減少、運動不足など影響

排便の回数や量が減る「便秘」に悩む人は、高齢になるほど増える。
食事や水分、運動量が減るなど生活習慣の変化が影響するようだ。
食物繊維の多い食事を心がけると、よいという。
ただし、深刻な病気が隠れていることや薬が原因になることもあるため注意が必要だ。

東京都内の80代の女性は、心不全の治療のため利尿薬を使うようになり、便秘に悩むようになった。
心不全になると、余分な水分がたまりやすくなる。
心臓に余計な負担がかかるため、水分を除く目的で利尿薬が使われるが、その一方で水分が減って便秘も起きやすくなるという。
 
診察をした大学病院に某医師は便秘の治療薬の一つ、酸化マグネシウムを処方。
女性は薬を飲み、症状は改善した。
たかが便秘と思わず、気になるようならば放置せずにきちんと受診することが大切だ。
 
10月に発行された「慢性便秘症診療ガイドライン」は、便秘を「本来体外に排出すべき糞便)を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義した。
 
国民生活基礎調査(2016年)によると、便秘症状を訴える人は人口千人に対し男性24.5人、女性45.7人。高齢になるほど増える傾向で、65歳以上ではそれぞれ65.0人、80.5人になる。
 
なぜ加齢とともに便秘の人は増えるのか。
食べ物や水分の量が減ることも原因だ。
食べなければ便になるものが乏しくなり、水分が減れば硬い便になって排出しにくくなる。
高齢者は腸のはたらきも落ちるため、腸内で便の移動がスムーズにいかなくなる。
腹筋が弱くなり、いきむ力が低下することも一因という。
 
病気や使っている薬が原因になることもある。
糖尿病は腸の神経を弱らせるため、便秘になりやすい。
過活動膀胱やパーキンソン病は高齢者で患者が増えるが、これらの治療で使われる抗コリン薬には副作用として便秘がある。
うつ病の治療薬などでも起きるという。
 
重大な病気が隠れていることもある。
代表的なのは腸閉塞や大腸がん。急に便秘になったり出た便に血が混じったりしていた場合はこうした可能性も否定できない。
消化器内科などを受診し、検査したほうがよい。

食物繊維には2種類
病気が原因の便秘は、まずその病気の治療が最優先だ。
薬が原因の場合は、薬の変更も選択肢になる。
それ以外の慢性的な便秘の治療は、生活指導と薬が中心になる。
 
朝昼晩の食事のメニューや時間、排便の回数や便の状態を記録する「排便日誌」をつけるとよい。
どんな食習慣のときに排便が快調なのか不調なのかがわかり、生活改善のきっかけにる。
 
排便に適した姿勢は、本来は和式トイレだ。
直腸から肛門までまっすぐになり、便を排出しやすくなる。
洋式では足台を置くと、和式の姿勢に近づく。
少し前かがみに。ロダンの彫刻「考える人」のような姿勢がおすすめだ。
 
食事はどんなものが良いのか。
誤った情報をもとに自己流で食事をし、かえって悪化させる人もいる。
 
重要とされる食物繊維には「不溶性」と「水溶性」の2種類がある。
不溶性は玄米やごぼうに多い。腸内で水分を吸収してふくらみ便の量を増やす働きがある。
水溶性は納豆やワカメなどの海藻に多く含まれる。
腸内の便と混じり合い、便を軟らかくする効果がある。
 
ただし過剰にとると便秘が悪化することもある。
不溶性ばかりとると便が硬くなり、水溶性の海藻はよくかまないと消化されにくい。
両方をバランス良くとりたい。
 
おすすめの食材の一つが、水溶性の食物繊維が豊富なもち麦だ。
米2に対しもち麦1を混ぜて炊いて、主食にすれば無理なく食物繊維をとれる。
漬物などの発酵食品は植物性乳酸菌が多く含まれ効果的だ。
オリーブオイルもおすすめ。
納豆1パックに大さじ1杯程度のオリーブオイルをまぜて食べるのは簡単で長続きしやすいという。
 
女性では一口の咀嚼回数が30回以上の人、男性では1日あたり1500ミリリットル以上の水分をとる人に快便が多い、との報告もある。

刺激性下剤の依存性に注意
食物繊維の多い食事や水分の摂取、ウォーキングなどの運動、朝食後にトイレに行く習慣などを指導し、それでも改善がみられなければ、薬を検討していく。
 
治療薬は、酸化マグネシウムが以前から使われてきた。
ただ、腎臓のはたらきが落ちている高齢者では、若い人よりも血液中にマグネシウムがたまりやすくなる。長い期間使い続けると、「高マグネシウム血症」になり、血圧低下などがあらわれることもある。
必要に応じて、定期的に血液中のマグネシウム値を検査しながら使う。
 
12年には、国内では約30年ぶりとなる新しい薬のアミティーザ(一般名・ルビプロストン)が発売された。
小腸に働きかけ、便の水分量を増やして軟らかくし、排出しやすくする効果がある。
 
一方、多くの医師が注意を促すのが、刺激性下剤と呼ばれるタイプの薬だ。
市販薬としても売られているが、人によっては薬の量が増えていき、使わないと排便できなくなる依存性が指摘されている。
刺激性下剤はどうしても出ないときなど、必要時に限るべきだ。
自己判断で使わず、まず医師に相談したい。

 
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参考・引用
朝日新聞・朝刊 2017.12.6