見過ごされた“ウイルス”  HTLV-1ウイルス

母乳を介してわが子へ感染するHTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス1型)。
感染すると白血病や神経性の病気などの重篤な病気を引き起こす危険性があります。
国内では約108万人が感染しているといわれていますが、感染防止の対策は一部の地域のみで行われており全国的には徹底されていません。
感染者のほとんどが九州沖縄に集中しているといわれていたためです。
しかし、厚労省が20年ぶりに感染実態を調査した結果、感染者が全国的に拡散している事実が判明しました。



HTLV-1ウイルスとは?
ヒトT細胞白血病ウイルス1型。
現在日本に108万人以上感染者がいる。
感染者のほとんどの人が無症状。
発症する人は一部のみで潜伏期間が数十年と非常に長いのが特徴です。
発症すると非常に重い症状につながる恐れもあります。



ウイルスが引き起こす主な病気
ATL(成人T細胞白血病
全身のけん怠感。
肌のかゆみ、赤く発しんが出たりします。
急性のものは免疫力が落ち、感染症にかかりやすくなります。
生涯発症率は5パーセント。死亡者数は年間1,000人以上。

HAM(HTLV-1関連脊髄症)
ウイルスの感染がきっかけで脊髄が傷つけられる病気です。
手足が思うように動かず、足を引きずって歩く。トイレが近く、我慢できなくなるなど人によって症状はさまざま。
症状は徐々に悪化し歩けなくなることもあります。
生涯発症率は0.2パーセント。
患者は1,400人ほど。




発症は予防できないの?
現状では難しいとされています。ウイルスが感染したのち、どのようなメカニズムで発症するかが解明できていないため発症予防の薬の開発は進んでいません。




自分が感染しているかどうかはどうすればわかる?
一般の医療機関でHTLV‐1感染確認の血液検査をお願いすれば調べられます。




HTLV‐1ウイルスの感染経路
母乳
6か月以上母乳を与えた場合の感染率は20パーセント〜25パーセント。
ミルクで育てたり、母乳を一度凍結してから与えたり、与える期間を短くすることで感染のリスクは下がります。
しかし、母乳を完全にやめても3パーセントほどの確率で感染がおこります。

輸血
1986年からウイルス検査が行われていて、現在感染の心配はありません。
1985年以前に輸血が必要な大きな手術をした人は可能性があります。

性交渉
男から女へ感染する報告が多いですが、どれぐらいの確率で感染するかは不明です。
避妊具を用いることで防ぐことができます。

※息、くしゃみ、キス、接触での感染はありません。



妊婦健診におけるHTLV‐1検査について
任意で受けることができます。
九州の産婦人科においてはあらかじめ項目に組み込んでいる場合があります。
担当の産婦人科にお問い合わせください。
検査費用はおよそ2,000円ほどで原則自己負担となります。




患者の会の情報を知りたい
NPO法人「日本からHTLVウイルスをなくす会」
http://www.minc.ne.jp/~nakusukai/index.html



ウイルスのこと、病気のことを詳しく知りたい
JSPFAD(HTLV‐1感染者疫学調査) 
http://www.htlv1.org/





http://www.nhk.or.jp/hot/2010/03/10.html
(画像はこのサイトでご覧下さい)
出典  生活ほっとモーニング 2010.3.10
版権  NHK