めまいの最新治療(上) 

内耳異常か眼球を診る 原因究明の検査
天井がぐるぐる回ったり、ふらついたり、めまいは厄介だ。命にかかわる疾患が隠れていたり、不安感を持つこともある。内耳の異常が関係していることが多いが、季節の変わり目にも起きやすい。


 
「目の動き、聴力、体のバランス。この3つの検査を行います」
東京女子医科大東医療センター・めまい外来の新井寧子医師(耳鼻咽喉科)は、こう説明する。

めまいを引き起こすのは、
(1)聴覚と平衡感覚をつかさどる内耳の異常
(2)脳梗塞脳出血など脳の疾患
(3)ストレス
などがある。
このうち内耳の異常が全体の約八割を占める。
三つの検査を行うことで、まず内耳の異常や、内耳以外の異常かどうかが分かる。

検査では目の動きを調べる。「フレンツェル眼鏡」というゴーグルのような眼鏡をかけ、目に赤外線を当て、拡大画面にその画像を映して診断する。
多くの場合、めまいが起きている間や、めまいが収まった後も数日は眼球が動いている。
その動きを診ることで、内耳のどこに異常があるかが分かる。

目の動きを電気的に記録する方法もある。
目の周囲に電極をつけ、暗闇の中で動く光の模様を目で追わせる。
耳に約五ミリリットルの水を入れて、内耳の三半規管を刺激、めまいを起こして観察する。

聴力検査も行う。
複数の周波数の音を、どこまで聞き取れるかを調べる。
何回もめまいを繰り返すメニエール病や、約3割がめまいを伴う突発性難聴は、聴力にも異常が出るので見分ける手段になる。

体のバランス検査は、重心の揺れを測定する機器に乗り、1分間直立して揺れを記録する。
内耳の異常の場所や程度などが分かる。

「こうした検査で、内耳に異常がある多くのめまいが分かる」と新井医師は言う。
検査は、病院のめまい外来や耳鼻科などが行っている。
検査は約1時間半かかり、費用は健康保険が適用され3千円程度(3割負担)。

脳梗塞脳出血など脳の疾患については、これらの検査では分からないことが多い。
「頭痛、ろれつが回らない、むせる、体のバランスがとれない、といった症状も伴う場合が多いので、すぐに脳神経外科へ行った方がいい」と新井医師はアドバイスする。

こうした症状がなくても強いめまいがあり、MRIやCT検査で、小さい脳梗塞が見つかることもある。
内耳と脳をつなぐ聴神経に腫瘍ができてめまいが起こることがある。
腫瘍は良性でも、顔面神経のまひや耳が聞こえなくなったり、脳を圧迫して死に至る場合もあるので治療が必要だ。

めまいの状態や耳鳴りの有無、病歴なども診断に役立つ情報なので、医師に伝えることが大事だ。

原因や病名ははっきり特定できないが、ストレスなども原因になる。
医師の問診を通して、めまいが起きやすい状態や起きていなかったときと症状や体調などが変わっているかといった点を根気よく探り、生活を見直していく。
うつ病などがある場合もあり、精神科や心療内科に行くように勧められる。

ほかにも心臓や腎臓などの疾患や、更年期障害など原因は多岐にわたる。めまいで医療機関を訪れても約四分の一は病名が特定できない。このため不安感を抱える人もいる。

「めまい止めの薬を持つだけで、あるいは年に数回病院に通うだけで安心してめまいが起こらない人もいる。不安なら専門医でなくても、身近で安心して診てもらえる医師を見つけることも一つの対処法だ」と新井医師は話す。


出典 中日新聞・朝刊 2010.3.5
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