脳死移植、家族承諾で提供、本人意思は不明

脳死移植、東海初、家族承諾で提供 50代女性、本人意思は不明
日本臓器移植ネットワークは22日、東海地方の病院で脳血管障害の治療を受けていた50代の女性患者について、家族の承諾により臓器移植法に基づく脳死と判定されたと発表した。
女性は書面で臓器提供の意思表示はしていないが、家族が承諾した。
同日午後、臓器摘出手術が行われ、名古屋第二赤十字病院名古屋市昭和区)など4つの病院で5人の患者への移植手術が行われた。
 
脳死下の臓器移植は89例目。
7月17日の改正臓器移植法の施行後、家族の承諾による臓器移植は今月10日の1例目以降、約2週間で3例目となり、東海地方では初めて。
1例目は本人が口頭で意思表示をしており、本人意思が不明で家族のみで承諾した事例は2例目。
 
移植ネットによると、女性が重篤な状態となった19日、医師が家族に病状や治療方針を説明する中で脳死下の臓器移植について説明。
21日に医師が脳死とされうる状態と判断し、正式に家族に提供を提示した。

移植ネットのコーディネーターは同日午後3時ごろから家族と面談。
家族は女性と臓器移植について話したことはなかったが、「誰かの役に立てたい」として、女性の父や兄姉ら家族5,6人の総意で、その場で決断したという。
 
心臓は東北大病院(仙台市)で心筋症の30代女性に、両肺は同病院で肺高血圧症の20代女性に、肝臓は大阪大病院(大阪府吹田市)でB型ウイルス性肝硬変の60代男性に、腎臓は藤田保健衛生大病院(愛知県豊明市)で腎炎の40代女性に、もう一つの腎臓と膵臓は名古屋第二赤十字病院で糖尿病の30代女性に、それぞれ移植される。
 
眼球はアイバンクを通じ提供。家族は小腸の提供も承諾したが、該当者がいなかった。
 
移植ネットは、家族の意向で、女性が治療を受けていた病院名などを公表しなかった。
 
移植法の改正前は、意思表示カードなど書面での本人の提供意思の表示がなければ、脳死での提供はできなかった。
改正法で本人の意思が不明でも、家族の承諾で提供可能となった。

出典 中日新聞・朝刊 2010.8.23
版権 中日新聞社



臓器提供 家族承諾で3例目 急ペース業務圧迫懸念
速いペースで提供者が出ることを不安視する声も。山口大の鈴木倫保教授(脳神経外科)は「余裕ある病院ならいいが、地方の中小病院では、患者のリスクマネジメントがおろそかになるなど業務圧迫につながらないか」と懸念する。
 
また、今回も提供施設が伏せられるなど、情報公開の面で問題が指摘される。
日本移植者協議会の大久保理事長は「主治医から臓器提供の選択肢の提示があったなどの情報が出たのはいいこと。だが提供病院も県単位ぐらいは公表してもいいのでは」と話す。
 
松江病院(東京都江戸川区)の高山泰広脳神経外科部長は「選択肢の提示で『延命治療を続ける』『積極的な延命をしない』『臓器を提供する』の三つが公平に説明され、家族が自由に選べる状況だったか検証が必要だ」とさらなる情報の公開を訴える。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2010082302000037.html
出典 東京新聞・朝刊 2010.8.23
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