微小カプセルでがん細胞まで薬剤

微小カプセルで細胞まで薬剤、がんに効果確認 東大
東京大学の片岡一則教授らは独自に開発した微小カプセルに抗がん剤を入れて投与すれば、がん細胞を効率よく殺せることをマウスの実験で確認した。
血液で運ばれながらがん細胞に入り、細胞内で薬剤を放出する。
健康な細胞には入らないようカプセルの大きさを調整してあり、副作用を抑えられる。現在進んでいる臨床試験(治験)を後押しする成果だ。

成果は米科学誌サイエンスの姉妹誌「サイエンス・トランスレーショナル・メディスン」(電子版)に6日掲載される。

片岡教授らは高分子物質で直径約40ナノ(ナノは10億分の1)メートルのカプセルを作り、内部に抗がん剤を入れた。
大腸がんのマウスに微小カプセルを注射し、特殊な顕微鏡で動きを観察した。
カプセルはがん細胞に直接取り込まれてから壊れて薬剤が放出され、確実な効果が見込めるという。

カプセルを使った治験は東大発の創薬ベンチャー企業ナノキャリアがスイス企業と組んで欧州で昨年始めた。
動物実験抗がん剤として効果があることはわかっていたが、具体的な作用の仕方を詳細に観察したのは初めて。「(カプセルを使えば)効率よくがんを殺し副作用を減らせることを確認できた」(片岡教授)としている。

出典 日経新聞 Web刊 2011.1.6
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