乳がんのリンパ全切除

リンパ全切除の有効性疑問 乳がん、生存率変わりなし
早期の乳がん患者の外科手術で、転移を防ぐために脇の下のリンパ節全体を切除する「郭清」をしても、リンパ節の一部しか切除しなかった場合と生存率に変わりはないとする米国の多施設臨床試験の結果が、9日付米医学会誌(JAMA)に発表された。

「郭清」はがんの再発を防ぐために広く行われているが、むくみが出るリンパ浮腫などの合併症が起きやすいとされる。
研究グループは「(郭清をやめる)新手法を取り入れることによって、術後の生活を改善できる」と指摘している。

100カ所以上の医療機関が参加。
1999〜2004年に、手術前に脇の下の「センチネルリンパ節」を検査して転移が見つかった早期がんの患者を対象に、リンパ節全体の郭清をした場合と、転移が見つかった一部だけを取り除いた場合の生存率を比較した。

転移を防ぐための抗がん剤放射線治療なども続けた結果、5年後の生存率は全切除した445人は91・8%、一部切除の446人は92・5%と、ほぼ同じだった。

一方、合併症は全切除では70%で起きたが、一部切除では25%で、大きな差が出た。

乳がん細胞は早い段階で全身に広がることが分かっており、研究グループはリンパ節切除よりも、抗がん剤放射線による全身的な治療が再発を防いでいるのではないかとみている。

m3.com 医療ニュース
出典 共同通信 2011.2.10
版権 共同通信社



<私的コメント>
今頃になってこんな研究報告が出るのも不思議です。
乳がんに限っての話なのか、他の固形がんでのリンパ節切除の意義についても知りたいものです。
従来、乳がんの治療では、腫瘍に近い「センチネル(見張り)リンパ節」に転移が見
られた場合、拡大を防ぐため、周囲のリンパ節も切除する方法が一般的でした。

米国の新規乳がん患者の2割(4万人)がこの術式で手術されており、この手術法は、日本でも普及しています。
今後、リンパ節の切除が最小限で済むよう治療方針の見直しが進む可能性があります。