抗がん剤が効かなくなる仕組みを解明

京大など、抗がん剤が効かなくなる仕組みを解明
京都大学武田俊一教授や広田耕志准教授らは、代表的な抗がん剤「シスプラチン」が効きにくくなる仕組みを解明した。
シスプラチンががん細胞のDNA(デオキシリボ核酸)を傷つけても、がん細胞にある2種類の遺伝子がDNAを修復していた。
薬効が落ちない抗がん剤の開発につながる成果で、米科学アカデミー紀要(電子版)に5日掲載された。

スイスのチューリヒ州立大学などとの共同成果。
シスプラチンはがん細胞のDNAを傷つけることで、がん細胞が分裂して増殖するときのDNAの複製を抑えて死滅させる。
ただ、長期間投与し続けると、効きにくくなる場合がある。

研究チームは、小児白血病などを引き起こす遺伝病「ファンコニ貧血」の患者ではシスプラチンを長期間投与しても効き続けることに注目。
この患者の細胞は「Slx4」と「Fan1」という2つの遺伝子の機能が失われていることを突き止めた。

この2つの遺伝子が正常に働く細胞を調べたところ、シスプラチンで傷ついたDNAを修復していた。
がん細胞も2つの遺伝子が正常に働くため、研究チームはこれらの働きを抑える物質を見つければ、シスプラチンの治療効果を大幅に高めることが可能とみている。

出典 日経新聞・夕刊  2011.4.5
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