大型後発薬、相次ぎ登場

認知症生活習慣病治療 医療費抑制に追い風
沢井製薬など後発医薬品各社が28日にも、国内で年間1千億円超の売上高がある大型薬の後発薬を相次ぎ売り出す。
エーザイ認知症薬は33社、米ファイザー高脂血症薬は5社がそれぞれ後発薬を発売する。
分野も患者数が多い生活習慣病に加えて、神経疾患にも広がる。
利用者の拡大が見込めるため、医療費の抑制や後発薬市場の活性化につながりそうだ。

後発薬は特許が切れた新薬と同じ成分や製剤技術を使い、新薬より3〜5割安い。医療機関の処方箋をもとに薬局などで購入する。医療用医薬品市場での後発薬の国内シェア(数量ベース)は2010年度で23%と、5割を超えている英米などより低い。大型後発薬が増えれば、年間で約9兆円にのぼる医療用医薬品への負担を抑制する追い風にもなりそうだ。

沢井製薬日医工東和薬品などはエーザイアルツハイマー認知症薬「アリセプト」の後発薬を投入する。
アリセプトは11年3月期に国内で1278億円の売上高(薬価ベース、IMSジャパン調べ)があった。

今年6月に日本で特許が切れ、各社が厚生労働省から製造販売の承認を取得した。
一斉に発売する企業数の多さで、08年に34社が売り出した高血圧症の後発薬「アムロジピン」に次ぐという。

アリセプトの後発薬で各社は用量が3ミリグラム、5ミリグラムの錠剤や水なしで飲める「口腔内崩壊錠」を用意する。
特許が切れていない10ミリグラム錠は今回販売しない。

最も多く処方されている5ミリグラム錠は薬価が1錠427.5円。
1日1回、1錠ずつ服用すると、1年間の患者の薬代は3割負担の場合で約4万7千円。アリセプト後発薬は新薬の7割程度の価格になるとみられ、単純計算では年3万円程度の負担で済む。
認知症患者などを多く抱える介護施設などで新薬からの切り替えが進む可能性がある。

ファイザーが開発し、日本でアステラス製薬が販売する高脂血症薬「リピトール」も今年6月に国内の特許が切れ、後発薬世界2位の独サンドの日本法人など5社が後発薬を売り出す。
リピトールも国内売上高が1083億円(薬価ベース、IMSジャパン調べ)で、新薬と同じ5ミリグラム、10ミリグラムの錠剤が発売される。

アリセプトやリピトールの後発薬を含め、沢井製薬は11月に12成分25品目、東和薬品は15成分27品目の新製品を投入。
12年3月期は新製品だけの売上高で沢井製薬が20億円、東和薬品が12億円を見込んでいる。

国内売上高が1千億円を超す大型薬には武田薬品工業「ブロプレス」やノバルティスファーマ「ディオバン」という高血圧症薬もあり14年ごろ日本での特許が切れる。

出典 日経新聞・朝刊 2011.12.2
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