iPS:血小板大量作成に成功

さまざまな種類の細胞に分化できるヒトの人工多能性幹細胞(iPS細胞)から、血液成分の血小板を大量に作成できる方法を、京都大と東京大の研究チームが開発した。
血小板は手術時の止血などに不可欠だが、凍結保存ができず、不足しがちだ。
実用化すれば安定供給につながる研究として注目される。
カリフォルニア州で開催中の米国血液学会で11日午後(日本時間12日午前)に発表する。

東大チームは09年、ヒトiPS細胞から血小板のもとになる細胞「巨核球」に分化させ、血小板を作ることに成功した。
しかしiPS細胞1個からできる巨核球は約40個ほどで、血小板の大量作成が困難だった。

京都大iPS細胞研究所の江藤浩之教授(幹細胞生物学)らは、増殖に不可欠な遺伝子と、細胞の老化を防ぐ遺伝子を巨核球の前段階の細胞に組み込んだところ、無限に増殖できる巨核球ができた。
この巨核球1個から数十個の血小板ができ、免疫不全マウスに輸血したところ、止血機能が確認できた。

血小板は通常、採取から5日目に廃棄する。
治療で繰り返し輸血する場合、白血球の型(HLA)が同じ血小板を輸血しなければならず、事前の確保が課題だが、巨核球の状態なら凍結保存できるため、大量作成し、必要な時に解凍して血小板を作り出すことが容易になる。

また、細胞に遺伝子を組み込むと、がん化する危険性があるが、血小板には遺伝子がないため、その恐れがないという。

江藤教授は「さまざまなHLAの巨核球のバンクを準備すれば、血小板を安定供給できる。3〜4年後には臨床研究を始め、人でも機能するか確認したい」と話した。
【須田桃子】
出典  毎日jp  2011.12.11
版権  毎日新聞社