ロタウイルスのワクチン「重症化 9割抑制」

ワクチン「重症化 9割抑制」 ロタウイルス、乳幼児に胃腸炎

冬場に小さな子どもを中心に、激しい下痢や嘔吐を引き起こす「ロタウイルス」による胃腸炎
重症化を防ぐワクチン接種が11月から始まった。
海外120カ国・地域以上で使われているタイプで、ようやく国内でも認められたと歓迎する専門家も多い。
ただ接種は任意で費用が高いほか、接種できる期間も限られている。
注意点をしっかり把握することが重要だ。

冬の感染症といえば、インフルエンザやノロウイルスがすぐに思い浮かぶが、ロタウイルスも流行する。
主な時期は1~4月。
生後6カ月~2歳の乳幼児に多く見られ、日本では5歳までにほぼ100%の子どもが感染するといわれている。
大人も感染するが症状が表れないことも多いという。

毎年約80万人の乳幼児が受診し、このうち約10%が入院している。
死亡例もある。
<私的コメント>
どのぐらいの死亡例があるのか具体的に知りたいところです。

世界では、乳幼児の下痢の30~50%程度がロタウイルスが原因と推定されており、この比率はノロウイルスを上回っている。

主な症状は激しい下痢や嘔吐と発熱。
下痢はコメのとぎ汁のような白っぽい便が特徴で、1週間ほど続くケースが多い。
しかし必ずしも白い下痢便が出るとは限らない。

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感染力が強く
治療ではロタウイルス自体に効く薬は今のところない。
脱水症状になるのを防ぐため、こまめに水分を補給する。
下痢や嘔吐を止める薬は、かえって回復の妨げになるので服用しない。
<私的コメント>
私は嘔吐を止める薬剤(制吐剤)を主体に処方し、場合によって整腸剤を処方する(下痢止めは原則的に処方しない)ようにしています。
これが一般的な処方です。
「嘔吐を止める薬は、かえって回復の妨げになる」という理由がわかりません。

感染を予防するのも難しい。
ロタウイルスは吐いたものやふん便に直接・間接的に触れることで経口感染する。
おもちゃにウイルスが付着していることもある。
感染力は強く10個以下のウイルスが口に入るだけで感染する。
乾燥した状態ではウイルスが10日間ほど生き残ることもある。

厄介なのは、せっけんや消毒用アルコールにも強いこと。
塩素系漂白剤や哺乳瓶用の消毒液などでしっかり消毒し死滅させる必要がある。
このため、乳幼児がロタウイルスの感染を予防するのは事実上不可能との声が上がっている。

そこで、ワクチン接種による予防が重要になってくる。
世界保健機関(WHO)は世界各国に対し、ワクチン接種によるロタウイルスの予防を推奨。
これを受け、既に120カ国・地域以上でワクチン接種を実施している。
米国ではロタウイルスによる胃腸炎の流行をワクチンでほぼ抑え込むことに成功している。
<私的コメント>
諸外国では公費負担はどうなっているのでしょうか。
新聞記事としてはそこまで書くべきです。

国内でも今冬から接種できるようになったのが「ロタリックス」というワクチン。
生きたウイルスの病原性を弱めて作った。
飲むタイプで、生後6週以降に1回目、同24週までに2回目を接種する。
接種間隔を4週以上空ける必要がある。

製薬会社のグラクソ・スミスクラインによると、国内で実施した臨床試験(治験)では、ワクチンを期間内に2回接種するとロタウイルス腸炎の発症を約8割、重症化を9割以上抑える効果があった。
接種後1カ月以内にみられる副作用には、刺激に反応して不機嫌になりやすい、下痢、せき・鼻水などが報告されている。

注意点もある。
まずは費用負担。
現在は任意接種のため2回で3万円近くかかる。
費用の一部補助を検討している自治体もあるので、問い合わせてみるのもよいだろう。

接種期間も頭を悩ませる要因だ。
生後6~24週間は3種混合(ジフテリア・百日ぜき、破傷風)やBCGなどのワクチンを定期接種する「ワクチンラッシュ」期にあたる。
小児用肺炎球菌やインフルエンザ菌b型(ヒブ)など任意のワクチン接種もこの時期だ。
これにロタウイルスのワクチンを追加すると、スケジュールをどうすべきか迷う保護者も少なくないだろう。

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各種同時を推奨
小児科医らでつくる「VPD(ワクチンで防げる病気)を知って、子どもを守ろう。」の会は、各種ワクチンを忘れずに接種するよう同時接種を推奨している。
ロタウイルスとヒブ、小児用肺炎球菌、3種混合ワクチンなどが同時に接種できるという。
「かかりつけの医者と相談し、最善のタイミングで接種を受けてほしい」と日本赤十字社医療センター(東京・渋谷)顧問の薗部友良医師は話す。

ただ、今年3月には肺炎球菌とヒブなどの同時接種後に、乳幼児が死亡した例が報告された。
厚生労働省が調査した結果、接種と死亡との間に明確な因果関係はないとされたが、不安をおぼえた保護者らが同時接種を控える動きも出ているという。
<私的コメント>
「明確な因果関係はない」と「因果関係はない」とは全く違います。

薗部医師は「同時接種を積極的に進めている米国や欧州のデータからもワクチンは安全だ」と強調する。同時接種が嫌だからといって、ワクチンを避けるのはかえってリスクを高めることになるという。
小児科医らの団体などは、任意接種では保護者の所得によって子どもの健康に差が出るとして定期接種化を国に要望している。
厚労省は今後、検討する方針だ。 (草塩拓郎)
<私的コメント>
小児科医の殆ど(少なくとも小児科学会)はワクチン推進派です。
同時接種による乳幼児の死亡例が出たことももう少し検討すべきではなかったのではないでしょうか。

出典 日経新聞・夕刊 2011.12.9
版権 日経新聞


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