子どもの予防接種(1)ヒブ・肺炎球菌「安全」

11月10日、感染症の後遺症に苦しむ患者やその家族、小児科医らが予防接種の拡充を訴え、シュプレヒコールを上げながら都内をデモ行進した。

ワクチンとは、感染症の原因となる病原体の毒性を弱めるなどして作った薬液のこと。
注射などで接種して、病気に対する抵抗力をつけるのが予防接種だ。
デモ行進では、「ヒブ(インフルエンザ菌b型)」と「小児用肺炎球菌」のワクチンを、公費で行う定期接種にすることなどを訴えた。

二つのワクチンは、脳を覆う髄膜に細菌が感染して発症する細菌性髄膜炎を防ぐ働きがある。
国内では2008年にヒブ、10年に小児用肺炎球菌のワクチンが相次ぎ発売された。
いずれも自費で受ける任意接種になっている。

細菌性髄膜炎はのどや鼻に感染したヒブや肺炎球菌が原因で起こる。
年間約600人を超える子どもが発症し、約5%が死亡、20~30%に発達障害や脳の障害などの後遺症が残る。

横浜市の会社員、Nさん(38)の長男、Kくん(6)は生後8か月だった06年5月に細菌性髄膜炎を患った。
39~40度の高熱が約1週間続き、けいれんも起きた。
約1か月の入院を余儀なくされ、抗生物質の点滴などを続けた。

今でも年1回通院し、後遺症が出ていないかどうか様子を見ている。
Nさんは「脳の発達に遅れが出ないかどうか心配です。ワクチンを接種できれば、感染することはなかったのに」と悔やむ。

国立病院機構福岡病院(福岡市)統括診療部長で小児科医の岡田賢司さんは「細菌性髄膜炎は生後6か月ごろから増える。その前に必ず予防接種を受けてほしい」と強調する。

だが、厚生労働省は今年3月、ヒブと小児用肺炎球菌の予防接種を一時見合わせた。
両ワクチンを同時接種した後、死亡したという報告が相次いだためだ。

報告を受けた厚労省は検討会で議論を重ねた。
結局、「接種と死亡に明確な因果関係は認められず、ワクチン接種の安全性に特段の問題があるとは考えにくい」との結論を出した。

4月に両ワクチンの予防接種は再開されたが、同時接種を控える保護者は少なくない。
岡田さんは「同時接種が原因で死亡したという報告は海外でもない。ヒブ、肺炎球菌以外でも乳幼児期に接種が必要なワクチンは多くあり、漏れなく接種するため、同時接種を積極的に行う必要がある」と指摘する。

<私的コメント>
ここで注意すべきは、「接種と死亡に明確な因果関係は認められい」の中の「明確な」という文言(もんごん)です。
これは、完全には否定出来ないというお役人言葉なのです。
当院ではいまだに同時接種は行っていません。
事故が起こる可能性はあるわけだし、起こった場合にどちらのワクチンが原因かの検証が出来ません。
以前、MMRで混合ワクチンでの相性が問題となりました。
この際の厚労省(当時厚生省)はきわめて遅いものでした。
当院はMMRが廃止される1年前からMMRは中止していました。
文芸春秋」などで問題点が指摘されていたからです。
多くの小児科医は廃止になるまでMMRを接種していました。
小児科医は一般的にすべてのワクチンに対して推進派です。
ちなみに私は内科医(本当の専門は循環器科)です。
上の記事でもう一つ気になることがあります。
それは、「同時接種が原因で死亡したという報告は海外でもない」というお言葉です。
日本で「両ワクチンを同時接種した後、死亡したという報告が相次いだ」わけですから、矛盾しています。
岡田先生(最近の新聞記事は医師も患者も「さん」なので医師か患者かわかりません。)は国立病院機構所属の国家公務員です。
国策に反対する意見を述べるには勇気がいる立場であることも配慮する必要があります。

追加;医師は「医師」、患者は「患者さん」または「患者様」でしたね。

出典 YOMIURI ONLINE yomi.Dr. 2010.12.2
版権 読売新聞社


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