抗がん剤効きにくくなった患者、肝炎薬併用で効果復活

抗がん剤が効きにくくなった前立腺がんの患者に、C型肝炎の治療薬「リバビリン」を抗がん剤と併用して使うと再び治療効果が高まるとする研究成果を、慶応大のグループがまとめた。
京都市で29日から始まった日本癌治療学会で発表した。
 
研究グループは来年3月にも医師主導治験を開始して、安全性と有効性を確認し、リバビリン前立腺がんの治療薬としても使えるようにしたい考え。
 
前立腺がんと診断される患者は年間約8万人で、男性では胃がんに次いで多い。
抗がん剤治療は、手術や放射線治療、男性ホルモンの分泌や働きを抑えるホルモン療法では治療できない患者に行われる。
しかし、抗がん剤を使い続けるうちに半数近くの患者で効果が弱まり、再びがん細胞が増殖する。
研究グループは、抗がん剤ドセタキセル」が効かなくなる過程で、がん細胞の遺伝子の働きが変化することに着目。
コンピューターを活用して、約3000種類の既存薬から、遺伝子の働きを元の状態に戻す薬を探した。
9種類の薬に候補を絞り、ドセタキセルが効きにくいマウスで実験したところ、リバビリンドセタキセルの併用でがん細胞が縮小した。
さらに、長期間の投与でドセタキセルが効かなくなった患者5人に、この治療を試すと、2人に効果が認められた。
 
このグループは「安全性が確認されている既存の薬同士の組み合わせで、新薬開発に比べ、安いコストで素早く実用化できると期待できる」とコメントした。
 
ドセタキセルは、進行した前立腺がんの治療で主力となる抗がん剤
今後、リバビリンとの併用で治療効果が高まることが確認されれば、大きな進歩となる。
実用化には、白血球の減少など両剤の副作用が相互作用で強く出ないよう、適切な用量を検討することが必要だ。

出典
読売新聞 2015.10.29(一部改変)