肥満とがんの関係

肥満で増すがんの危険 痩せすぎもリスク 糖尿病・心筋梗塞だけじゃない

肥満が健康を害することは今や常識となっている。
太りすぎがもとで、世界で年間400万人超が亡くなったとの報告もある。糖尿病などの原因になるとは知られているが、最近は一部のがんの罹患リスクを高めると指摘される。
「万病のもと」といえるが、一方で痩せすぎの方が危険との指摘がある。バランス良い体重コントロールを心がけたい。
 
肥満は3番目の死亡要因――。
米ワシントン大保健指標評価研究所の研究チームは9月、こんな調査結果を公表した。
2013年に世界188カ国で死亡した人について分析、最も死亡リスクを高めていたのは高血圧で、2番目が喫煙だった。
続いて「高BMI(体格指数)」。
いわば肥満だ。
 
BMIは体重をメートル換算した身長の2乗で割った数値。
世界保健機関(WHO)は25以上を「過体重」、30以上を「肥満」と分類する。
研究チームは25以上の人口は世界で21億人に及び、13年に肥満がもとで440万人ほどが死亡したと推計する。
90年に比べると6割増の水準という。
 
心筋梗塞や糖尿病など様々な病気のリスクを高める肥満。
脂肪細胞は善玉ホルモン「アディポネクチン」を分泌し、傷ついた血管壁を修復するなど重要な役割もある。
ただ内臓脂肪が増えるとこのホルモンの分泌は減り、加えて血圧上昇など悪い働きをするホルモンも分泌されてしまう。
 
日本の分類は世界基準より厳しい。
日本肥満学会が肥満と定めるのはBMI25以上。
日本人はそれ以上で健康被害が出やすいとされるためだ。
ある肥満症専門医は、「白人に比べて(血糖値を抑える)インスリンの分泌能力が低く、糖尿病を発症しやすい」と話す。
 
では上回ったらすぐ減量を始めなければならないのだろうか。
答えは否だ。
さらに糖尿病移行の恐れがある耐糖能障害のほか、脂質異常症や高血圧など11ある肥満関連疾患のうち1つ以上を発症し、「肥満症」と診断された場合に食事・運動療法が必要になる。
高血圧などでなくとも、コンピューター断層撮影装置(CT)検査で腹囲の断面図の内臓脂肪が100平方センチ以上であれば肥満症となる。
 
近年、注目を集めているのが肥満によるがんのリスク増大だ。
乳がんBMIが上昇すると罹患率が上がる。
 
研究によると、閉経した女性の乳がん罹患率BMI30以上の場合、23以上25未満の1.34倍。

私的コメント
当院へ来院された患者さんで、乳がんの手術をされている方は決して少なくありません。
そういった患者さんの肥満の有無を振り返ってみると、肥満の方に乳がんが多い、という実感はありません。
1.34倍というのはそういった数字なのかも知れません。
あるいは肥満よりも乳房の発達具合と関係するのかも知れません。
そういった研究はあるのでしょうか。

乳がんの発症や進行には女性ホルモン「エストロゲン」の過剰分泌が深く関わるが、閉経後の女性は脂肪細胞がこの分泌を促すため、肥満だと
リスクが高まるという。
 
さらに原因は未解明だが、閉経前に目を向けると同じ比較で2.25倍に跳ね上がる。
男性では大腸がんの罹患率が上がるという研究もある。
 
ではとにかく痩せればいいのだろうか。
しかし、むしろ痩せすぎの方が危険だ、という専門家がいる。
感染症への抵抗力が弱まり、特に肺炎で死亡する危険性が高まる高齢者は注意が必要だ。
さらには血管壁がもろくなり、脳出血も起こりやすくなる。

私的コメント
痩せれば乳がんや大腸がんが減るか、という流れの中で、ここからは急に「がん」と関係のない「死亡リスク」の話が展開されています。

BMIが19未満では男性、女性ともに死亡リスクが肥満より高いという報告もある。
年齢を重ね、体重が一定量増えることは問題ない。
大病を患えば体重は減ってしまうもので、脂肪は危機時への備えという考えを持つことも
必要だ。


参考
BMI25以上の割合 男性28%、女性は20%
厚生労働省の2013年の国民健康・栄養調査によると、肥満とされるBMI25以上の割合は男性が28.6%、女性は20.3%。
男性は09年のピーク(30.5%)を境に減少傾向にある。
女性は一進一退の状況だが、「普通」が減り、「痩せ」の増加が目立つ。
 
年代別でみれば男性は40代に肥満が最も多く、その割合は34.9%。
女性は70歳以上が27.1%と最も多い。
 
経済協力開発機構OECD)の統計では、BMI30以上は12~13年時点で米国は35.3%を占め、カナダ(25.8%)や英国(24.9%)も多い。
対する日本は3.7%で、日本でいうところの「太りすぎ」は外国に比べかなり少ない。
        
私的コメント
日本人はBMI25以上で健康被害が出やすい、と日本肥満学会が肥満の定義をBMI25以上としたわけですから、BMI30以上の議論は意味がないかも知れません。
(不要なグローバリゼーション?)
厚生労働省の国民健康・栄養調査によればBMIの経年変化に男女で違った傾向がみられます。
ここ10年で、男性は増加傾向にあり女性は逆に減少傾向にあるのです。

出典
日本経済新聞・夕刊 2015.10.22


関連サイト
肉を積極的に食べ、健康長寿を狙え!
~健康リスクを回避する、食肉生活のススメ
http://president.jp/articles/-/6908
・人類は170~200万年前に誕生し、農耕が始まる1万2000年ごろまで、ずっと肉食中心で生きてきました。
それに、日本人の平均寿命が伸びたのは、昭和40年代で肉を食べることが生活に定着してきたころ。
私の研究でも、100歳以上の長寿者は肉をよく食べています。
・肉を食べると、体に必要なアミノ酸が補われて、血管が丈夫になる。
すると脳卒中のリスクが減り、動脈硬化、糖尿病、高血圧症、心臓病、うつ病、貧血なども予防できる。
とかく日本では悪者扱いされる、コレステロールは、実は必要なものだ。
・日本はコレステロールの摂取量が欧米諸国に比べて低いというデータもありますし、死亡率の第一の原因がガンだから。
ちなみにガンはコレステロール値の低い人に多いことがわかっている病気です
私的コメント;
ガンの人がコレステロールが低くなるのは当然です。
原因か結果かは、きちんとした疫学調査は出ていないはずです。

食物によし悪しなし! 柴田流健康長寿の14か条
~健康リスクを回避する、食肉生活のススメ
http://president.jp/articles/-/7008

私的コメント
こういったことを提唱する先生は長生きを実践しなければならないから、少し辛いですね。
もっとも、ポックリ逝っても責任をとる必要はありません。
ちなみに、この記事を書かれたのは75歳の時です。