肥満症

肥満症 「やせる脂肪」で健康に 寒い時にこの細胞が活性化

体についた脂肪を何とか減らしたいと、多くの人が考えている。
ところが脂肪の中に「やせる脂肪」があるという。
この脂肪の働きを強めれば、肥満予防につながるのではないだろうか。
 
世界人口の3分の1にあたる21億人が太り過ぎの状態で、年間340万人が肥満と体重超過によって死亡している・・・。
こんな調査結果が昨年、英医学誌ランセットに載った。
肥満は糖尿病、高血圧といった生活習慣病を招くほか、動脈硬化脳卒中などにつながりかねない。
大腸がんや認知症の発生率を高めることも分かっている。

医学的には、脂肪が一定以上に多くなった状態を肥満という。
脂肪は「脂肪細胞」からできており、哺乳類は大きく分けて2種類の脂肪細胞を持つ。
一つは、脂肪をエネルギーとしてためこむ「白色脂肪細胞」。
もう一つは、逆に脂肪を燃焼してエネルギーを消費する「褐色脂肪細胞」だ。
 
大人での発見
褐色脂肪細胞は、リスなど冬眠する小動物が持っている。
この細胞は体を動かすことがなくても熱を発生し、体温を保つために役立っている。
 
人間でも赤ちゃんのころに存在するものの、成人にはほとんど存在しないと考えられてきた。
ところが2009年、がん検診に使う陽電子放射断層撮影装置(PET)の画像分析から、大人にも首の周りや鎖骨の上あたりなどに、ある程度存在することが発見された。
 
さらに、寒い時にこの細胞が活性化していることが分かった。
血糖値が正常な人ほど数が多いほか、40代以降では数が減っていくため、中年太りとの関連も指摘されている。
 
人工的に作製
運動せずにエネルギーを消費できるなら、肥満予防につながるのではと、研究が活発化し、褐色脂肪細胞が人工的に作り出された。
褐色脂肪細胞をヒトのiPS細胞などから分化させて作り、マウスに移植して血糖値の上昇を抑えたり、中性脂肪を減らしたりする効果を確認した研究もある。
 
マウスと同様にヒトでも『細胞移植』することが考えられるが、コストが莫大となる。
まず人工的に作った細胞を使って、不明な点が多い褐色脂肪細胞の働きを探っていく研究が進められている。
 
ヒトの皮膚細胞などに遺伝子を導入して、褐色脂肪細胞を作製することに成功した研究もある。
次は内服すれば褐色脂肪細胞が増えるような物質を見つけることは研究目標となる。
新たな「やせ薬」が登場するかもしれない。

脳に作用 食欲抑える 肥満症の薬物療法
食欲や脂肪吸収・蓄積の仕組みの研究が進み、抗肥満薬が登場した。
国内では「サノレックス」(富士フイルムファーマ)が保険収載されており、BMI35以上の高度肥満症の治療に使うことが認められている。
脳に作用し食欲を抑える。
 
新しい薬では、米国で開発された「ベルヴィーク」の臨床試験を、エーザイが国内で行っている。
脳をだまし、食べなくても満腹と思わせる働きがある。
武田薬品は「オブリーン」を市場投入する見込み。脂肪の吸収を抑える働きがあるという。
 
一方、やせ過ぎにも注意が必要だ。
脂肪は「アディポネクチン」のような生活習慣病を防ぐ物質も分泌しており、適度な脂肪は健康に役立っている。

 
イメージ 1


参考・引用
中日新聞・夕刊 2015.3.26