ES細胞で国内初の治験申請

ES細胞で国内初の治験申請 肝臓病の赤ちゃんに

国立成育医療研究センターの研究グループが様々な細胞に変化するヒト胚性幹細胞(ES細胞)を使った国内初の臨床試験(治験)の計画を、国に申請したことが明らかになった。
重い肝臓病の赤ちゃんにES細胞から育てた肝臓の機能を持った細胞を移植する。
海外では目の難病や脊髄損傷などでES細胞を使う再生医療の治験が進んでいるが、日本でもようやく医療応用が本格化する。
治験は生まれつき肝臓で有毒なアンモニアを分解できない病気「高アンモニア血症」の赤ちゃんを対象に実施する。
ES細胞は不妊治療で使わなくなった余剰の受精卵を壊して作った。
ES細胞から育てたアンモニアを分解する働きを持つ肝細胞を、赤ちゃんのへその緒の血管から肝臓に注入する。
拒絶反応を抑える免疫抑制剤も使う。
 
治験は医師主導で、同センターの倫理委員会が5月に承認した。
現在、国の医薬品医療機器総合機構(PMDA)に計画を申請中。承認されれば来年にも実施する。対象は5人で、血液中のアンモニアの濃度が下がるかどうかを確かめる。
 
アンモニア血症の治療には母親などからの肝移植が必要だが、赤ちゃんがある程度の大きさに育つまで手術は難しい。
ES細胞を使う再生医療が効果を確認できれば、移植までのつなぎになる。
 
治験に成功すれば、同センターは企業と連携し、2020年ごろをメドにES細胞を利用した再生医療用製品の実用化を目指している。
 
ES細胞はiPS細胞と同じ万能細胞。
様々な細胞になるが受精卵の一部をもとに作るため、生命倫理の点で問題を指摘する声があり、国内での臨床応用は遅れていた。
 
同センターは再生医療等安全性確保法に基づき、臨床研究と自由診療に使うためのES細胞を新たに作る計画を国に申請中だ。
今回の治験に使うES細胞はこれとは別で、基礎研究や治験用に作製済みのES細胞を使う。
 
ES細胞を使う再生医療臨床試験が世界で最初に実施されたのは10年。
米バイオベンチャー、ジェロン社がES細胞から神経系の細胞を作り、脊髄損傷の患者に移植した。
今では韓国や英国、中国、ブラジル、イスラエルで実施され、移植を受けた患者は100人を超えたと推定されている。
 
日本では同じ万能細胞のiPS細胞を使った臨床研究が先行しているが、高アンモニア血症を対象にした臨床研究や治験は実施されていない。

参考・引用
日経新聞・夕刊 2017.8.28