感染症の際の発熱のメカニズム

感染症の際の発熱のメカニズム

風邪やインフルエンザにかかって熱が出るのは、体内に侵入してきた病原体を増殖させないようにする生体の防御反応。
体温が平熱に近い37度くらいだと病原体が増殖しやすいのだが、それよりも2度ほど上がると増殖速度が低下する。

また、病原体を攻撃する免疫細胞の中には、体温が上がることでより活発に働くようになるものもある。

風邪を引いたとき、第1に起こる反応は「熱を逃がさない」こと。
体の中で熱を運んでいるのは血液なので、まずは皮膚のすぐ下の血管を収縮させて、血流を低下させる。
いわば、体をエコモードに切り替えて、熱が放散するのを防ぐわけだ。

この第1の方法でも十分に体温を上げられないとなると、体は次なる手に打って出る。
体内にある脂肪を燃やして熱を作ろうとするのだ。
脂肪といっても、肥満の原因になる脂肪(白色脂肪組織)ではなく、熱を作り出す働きのある「褐色脂肪組織」がその対象となる。
子供の頃は褐色脂肪組織が多いので、冬でも薄着で平気だったり、風邪を引くとすぐに高熱が出たりする。ただ、この褐色脂肪組織は年齢とともに減少し、熱を作る能力も低下する。
年を取ると風邪を引いても子供の頃のように高熱にならないのはそのためだ。

第1段階である皮膚血管の収縮と、第2段階の褐色脂肪組織の燃焼は、自律神経の一つである交感神経によってコントロールされていたが、震えを起こすのは運動神経だ。
まさに運動をするかのように、骨格筋をブルブルと震わせて、熱を作り出す。

風邪の発熱の程度と震えの関係
悪寒 37度前後
・寒気を感じる
・顔色が悪くなる
皮膚血管を収縮させ、血流を低下させて、体温の低下を防ぐ

微熱 37~38度程度
・熱っぽい
・明らかに寒いと感じる
褐色脂肪を燃焼させて、体温を上げる

高熱 38度以上
・ガタガタ震える
・高熱でとにかくつらい
骨格筋をブルブルと震わせて、さらに体温を上げる