乳がん増加は少子化が一因

乳がん増加は少子化が一因

今、日本人女性に一番多いがんは乳がんだ。
国内で増加ペースが最も速いがんの一つで、年間9万人が新たに診断を受けている。
日本の女性の12人に1人がこのがんにかかる計算で、年間死亡数は1万4000人と1980年の3倍にもなる。
 
がんは細胞の老化といってよい病気だから、高齢化が進んだ日本でがんの発症が増えるのは必然といえる。
たとえば、人口10万人あたりの大腸がん罹患数は日本では116人だが、日本ほど高齢化が進んでいない米国では42人と少なく、大きな開きがある。
 
しかも、乳がんについては日米とも80人程度と拮抗している。
他のがんとちがって、乳がんでは高齢化以外の要因が大きく関与しているからだ。
 
乳がん細胞を増殖させるのは女性ホルモンだ。
つまり、生理がある期間は乳がんのリスクが高くなる。
50歳前後で閉経を迎えると、女性ホルモンの分泌量は急激に減るから、リスクも少なくなる。
40代後半に乳がんのピークがあるのはこのためだ。
 
日本人の栄養状態がよくなって、初潮の開始年齢が早まり、閉経も遅くなっている点も乳がんの発症リスクを高めている。
さらに、急速に進む出生率の低下が乳がんを急増させている。
妊娠、出産、授乳の2年以上の間は生理が止まり、乳がんのリスクは低下する。
また、授乳そのものが予防効果を持つことも確実視されている。
 
昔は子供を10人産むこともあったが、そんなお母さんは20年以上も発症リスクが低い時聞があった。
逆に1人も妊娠しなければ、生涯乳がんのリスクにさらされることになる。
このように少子化乳がんを増やす決定的な要因と言える。
 
47都道府県で乳がんが一番多いのは東京都で、最も少ない鹿児島県の2倍以上だ。
これは、東京都の出生率が全国最下位であることに関係があると思われる。
都市部にありがちな運動不足や肥満もリスクを高めている可能性がある。
 
まず、自分自身のリスクを知ること。そして、毎月の自己触診と2年に1度のマンモグラフィーを欠かさないことが大切だ。

参考・引用
日経新聞・夕刊 2017.3.2